
製造業における設備保全の重要性は年々高まっています。突発的な設備故障による生産ラインが停止してしまうと、納期遅延や機会損失を招き、企業の競争力を大きく低下させてしまうためです。実際に、設備トラブルによる損失は想像以上に大きく、修理費用だけでなく生産停止による逸失利益も含めると、経営に深刻な影響を与えかねません。
そこで本記事では、設備保全の基礎知識から実践的な効率化手法まで、製造現場の担当者が知っておくべき情報をわかりやすく解説します。
設備保全とは
設備保全(equipment maintenance)とは、企業が保有している生産設備が万全な状態で稼働できるように維持していく活動です。製造業においては、工作機械などの加工機や炉や釜といった熱処理設備、搬送装置など、あらゆる生産設備が対象となります。
全ての設備に共通するのは、「問題なく稼働する」ことで初めて価値を生み出すという点です。設備は何の手当てもなく稼働し続けることはできません。経年劣化や消耗品の摩耗により、いずれトラブルが発生します。そのため設備保全に取り組むことで設備トラブルをできるだけなくし、安定した企業の生産活動が維持できるように継続的に取り組む必要があるのです。
設備保全・メンテナンス・保守の違い
設備保全やメンテナンス、保守という用語は、実務において混同されがちですが、それぞれ微妙な違いがあります。設備保全は、設備の機能維持や改善を含む広い概念を指します。
一方でメンテナンスは、設備が故障しないように見守り、必要に応じた整備や修理を行う活動です。また、保守は、設備を提供するメーカーが行うサービスとしての活動を指すことが多く、設備を使用する企業側が自社資産を維持する活動を設備保全と呼ぶのが一般的です。本質的には同じ活動を指していますが、立場や文脈によって使い分けられています。
設備保全の目的
設備保全の目的は、上述した通り設備の停止・故障を防ぐことです。具体的には、突発的なトラブルを防ぎ、計画的な生産活動を維持すること、万が一停止した場合でもその時間を最小限に抑えること、そして設備をより長期間稼働できるようにする長寿命化が含まれます。
また、設備の性能を維持することで品質の安定化を図り、不良品の発生を防ぐことにもつながります。さらに、適切な保全は従業員の安全確保にも直結します。故障が重大事故につながることを防ぎ、安心して働ける環境を作ることも設備保全の大切な役割です。
品質の安定化について詳しくは「【分かりやすい】品質管理とは?効果的・見落としがちな品質管理方法を詳しく解説!」をご覧ください。
設備保全の種類
設備保全には、そのアプローチの違いによって複数の種類があります。それぞれの保全方式には特徴とメリット・デメリットがあり、適切に使い分けることが保全効率を高めるポイントです。
予防保全
予防保全(PM: Preventive Maintenance)は、トラブルが起きないよう事前に予防するために計画的に行う保全方式です。予防保全には一定期間ごとに部品交換や整備を行う時間基準保全(TBM)と、設備の状態を監視・測定して必要性を判断する状態基準保全(CBM)があります。
事後保全
事後保全(BM: Breakdown Maintenance)は、設備が故障してから修理や部品交換を行う保全方式です。一見すると望ましくない方法に思えますが、全ての設備に予防保全を実施するのは現実的ではありません。例えば、生産への影響が小さい設備や予備機がある設備、照明のように故障しても即座に対応できるものについては、事後保全で対応する方がコスト効率は良い場合もあります。
ただし、重要設備が突発的に故障すると、長時間の生産停止や緊急対応による高額な修理費用が発生するリスクがあるため、あえて事後保全と決めた設備以外では避けた方が良いでしょう。
予知保全
予知保全(PdM: Predictive Maintenance)は、設備の状態を常時監視し、故障を予測して最適なタイミングで保全方式です。近年、IoTセンサーやAI技術の発展により実現可能になってきました。振動診断や温度監視、油分析などのデータを収集し、予兆検知モデルで異常の兆候を捉えられるため、予防保全のように決められた周期ではなく、本当に必要なタイミングで保全できます。これにより部品寿命を最大限活用しつつ突発故障も防げます。ただし、センサーやシステムの初期投資、データ分析の専門知識が必要となる場合があります。スマートファクトリー化とともに今後期待される保全手法です。
製造現場でよくある設備保全の課題
設備保全を進めるうえでは必ず、現場でよくある課題を認識しておく必要があります。これらの課題が発生しないように意識して取り組みを進めることが、本当の設備保全につながるのです。
人材が不足している
製造業全体で深刻化している人材不足は設備保全の人材不足にも大きく影響しており、保全関連の技術者も減少傾向にあります。実際に中山水熱工業株式会社が調査したレポートによると、「中小製造業の5割弱が、設備保全・点検部門で人手不足を感じている」と感じていることが明らかになりました。

引用:中小製造業における設備保全・点検業務の人手不足とDX化に関する実態調査|中山水熱工業株式会社
上記のような結果が起きた背景としては、熟練した保全技術者の高齢化が進む一方で、若手への技術継承が追いついていないことが一因として考えられます。下図の厚生労働省の「ものづくり白書」によれば高齢従事者数は年々増加傾向にありますが若年従事者数は減少傾向が見られます。このような状態では技術継承が難しいといえるでしょう。

引用:2024年版 ものづくり白書 (令和5年度 ものづくり基盤技術の振興施策) 概要|厚生労働省
また、近年の設備は電気・機械・制御・ITと多岐にわたる知識が必要で、育成のハードルも上がっています。しかし人手不足により一人当たりの担当設備数が増え、十分な点検時間が確保できない、後進の育成も時間を確保できず人手が不足しているという悪循環も生じています。
こうした保全業務の属人化を解消するには、標準化・見える化を進め、だれでも一定水準以上の技量を身に着けられるような仕組みが求められます。
保全コストが増大している
設備の経年劣化や近年の物価高騰に伴い、保全にかかるコストは年々増加する傾向にあります。日本銀行が発行している国内企業物価指数を見ると2020年を境に高騰していることが分かります。このようにインフレが進んでいることからあらゆるコストが高くなっているのです。

引用:企 業 物 価 指 数(2025年12月速報)|日本銀行
また、現在は外部業者への保守委託費用も上昇傾向にあり、自社での保全能力を高めることが求められています。保全コストを「必要悪」ではなく「投資」と捉え、効率化によりトータルコストを削減する視点が重要です。
一方でコストを最適化することも重要です。「【分かりやすい】工場のコスト削減を成功に導く実践的アイデア10選を詳しく紹介」をご覧ください。
設備情報が不足している
効果的な設備保全を実施するには正確な設備情報が欠かせませんが、多くの現場では設備情報を適切に管理していないという課題が多く見られます。特に保全履歴が紙やExcelで管理され、担当者ごとにファイルが分散しているケースが代表的です。
こうした状況では過去にどのようなトラブルが発生し、どう対処したかという貴重なナレッジが共有されず、同じ問題に何度も対応することになります。課題解決のためには設備管理システムの導入など、情報の一元化を進めましょう。
保全効率を高める3つのポイント
保全効率を高めるには以下のようなポイントを抑えることで、より最適な設備保全を実現できます。
保全方式の最適化を図る
全ての設備に同じ保全方式を適用するのではなく、設備の重要度や影響度に応じて最適な方式を選択しましょう。生産に直結する主要設備には予防保全や予知保全を適用し、影響度の低い設備には事後保全を選択するなど、メリハリをつけた保全計画を立てると保全効率が高くなります。
保全方式を決定する際には設備のダウンタイムが生産に与える影響度やコスト、保全作業の工数などを総合的に評価し、コストと効果のバランスが最適になるようにしましょう。こうした保全方式を見直すことで、限られたリソースを効率的に配分できます。定期的に保全実績・計画を分析し、方式の妥当性を検証することも大切です。
デジタル技術を積極的に活用する
近年の発達したデジタル技術を活用することで、さらに効率よく設備保全を実現できます。例えば設備管理システム(CMMS)の導入により、設備情報や保全履歴、部品在庫などをデジタルで一元管理できます。紙やExcelでの手間のかかる管理をなくしたことで、過去のトラブル事例や効果的だった対策を素早く検索でき、効率化が進みます。
ほかにもIoTセンサーによる遠隔監視では、設備の稼働状況や各種パラメータをリアルタイムで把握でき、異常の早期発見が可能になります。さらに、蓄積したデータをAIで分析することで、故障予測の精度が向上し、予知保全の実現に近づきます。
このようにデジタル技術を適切に活用することで、人手不足を補い保全業務の効率化をサポートしてくれるのです。
効率化について詳しくは「【分かりやすい】工場を効率化するには?生産効率を高めるための手法やポイントを解説!」をご覧ください。
消耗品・部品を高性能なものに切り替える
保全効率を大幅に高めるには、消耗品や部品そのものを高性能なものに切り替えましょう。頻繁に交換が必要な部品を長寿命部品へ切り替えることで、交換頻度が減り、作業工数と部品コストの両方を削減できます。理想的にはメンテナンスフリー化を目指し、保全の手間自体を削減できるように取り組みましょう。
特にフィルターのような消耗品は、性能と寿命のバランスが保全効率に大きく影響します。ニチダイフィルタの「積層焼結金網フィルター」は高性能・長寿命なため、保全負担を大きく軽減するだけでなく以下のようなメリットも期待できます。
- ろ過精度が高く異物混入リスクを最小限に抑えられる
- 耐久性・耐熱性・耐酸性が高いため多くの産業・用途で使用できる
- 再生洗浄で使い続けられる
このように積層焼結金網フィルターに切り替えることで設備保全の手間・コストを削減できるだけでなく、製品品質を高めることにもつながります。ぜひこちらから積層焼結金網フィルターについて検討してみてはいかがでしょうか。

高性能フィルターに切り替えて設備保全を効率よく行う
設備保全は、製造業の生産性・収益性を左右する重要な取り組みです。保全効率を高めるには予防保全、事後保全、予知保全を適切に組み合わせ、設備の重要度に応じた最適な保全方式を選択しましょう。ほかにもデジタル技術の活用、作業の標準化といった取り組みが有効ですが、中でも消耗品・部品の見直しは効果が素早く出やすいです。
特にフィルターのような頻繁に交換が必要な部品を、長寿命で高性能な製品に切り替えることで、保全負担を大幅に軽減できます。積層焼結金網フィルターは国産ロケットに採用されるほど高性能なフィルターのため、コスト増や製品品質に悩んでいる企業の方に自信をもっておすすめできます。まずは自社の設備保全における課題を洗い出し、優先順位をつけて改善に取り組むことから始めましょう。
ニチダイフィルタは積層焼結金網フィルターの生産能力で世界一を誇るメーカーとして、50年以上の実績と技術力でお客様のあらゆるニーズにお応えしています。設計から製造、アフターサービスまでの一気通貫体制により、現場の課題に的確にお応えします。なにかお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。


