
製造業において、品質向上は顧客満足度の向上や取引先との信頼関係構築につながる重要なテーマです。グローバル競争が激化し、顧客の要求水準が高まる中、製品や工程の品質を継続的に改善することが企業の競争力を左右します。また、慢性的な人手不足という課題を抱える製造業界では、限られたリソースの中で効率的に品質を向上させる取り組みが求められています。
本記事では、品質向上の基礎知識から具体的な取り組み方法、実践的なポイントまでを詳しく解説します。
製造業における品質向上とは
製造業における品質向上とは、以下の2つのように「製品そのものの品質」と「製造工程の品質」を改善することが挙げられます。
製品の品質向上
製品の品質向上とは、性能・信頼性・耐久性・安全性といった製品そのものの品質レベルを高めることを指します。
作業・工程の品質向上
作業・工程の品質向上とは、製造プロセスにおける作業の標準化や環境整備を行い、ヒューマンエラーを防止して安定した品質を実現することです。
品質向上に関連する基本要素
品質向上を実現するには、工程管理・品質検証・品質改善という3つの基本要素を理解し、それぞれを適切に実施することが重要です。
▶工程管理
工程管理とは製造プロセス全体における進行状況や実績データを把握・管理する取り組みです。生産スケジュールや作業の流れを明確に定め、納期を守りながら効率的なものづくりを実現するために行われます。主な内容としては、作業手順の標準化や品質管理、従業員への教育、機械設備のメンテナンスなどが含まれます。
▶品質検証
品質検証とは製品や製造プロセスに対する検査活動を通じて、品質の保証を担うことです。入荷した原料や部材の品質確認に加え、出荷直前の完成品に欠陥がないかをチェックします。さらに、工場内の生産ラインそのものをモニタリングすることで、製造現場が正常に機能しているかを把握できます。
▶品質改善
品質改善とは製品の質を継続的に向上することを指します。具体的には、顧客が期待する品質基準を達成すること、欠陥品の発生率を低減すること、納期遅延を防止することなどを目指した対策を立案・実行します。品質改善の手法としては、計画・実行・評価・改善のサイクルを反復する「PDCAサイクル」がよく知られています
製造業における品質低下のよくある課題
品質低下には以下のようなよくあるパターンが存在します。自社の状況と照らし合わせて、どのパターンに該当するか確認することが改善の第一歩につながります。
コスト削減
短期的なコスト削減を優先するあまり、製品の信頼性や安全性が損なわれるケースは少なくありません。原材料のグレードダウンや検査工程の省略、メンテナンス頻度の削減などは品質低下を招く大きな要因となります。特に、検査体制を簡略化してしまうと不良品の見逃しにつながり、結果的に顧客クレームや返品対応といった、より大きなコストを生む悪循環に陥る可能性があります。
適切なコスト削減方法について詳しくは「【分かりやすい】工場のコスト削減を成功に導く実践的アイデア10選を詳しく紹介」をご覧ください。
労働環境の悪化
人手不足による作業負荷の増加や長時間労働、教育不足、技術継承ができていない、属人化が進んでいることなどは、作業ミスの増加と品質低下につながります。このような技術ノウハウの共有ができていない状況で熟練作業者が退職してしまうと、長年培われてきた現場のノウハウが失われてしまい、同じ設備を使っていても品質が安定しなくなる事態が発生してしまうでしょう。
情報共有・コミュニケーション不足
部門間の連携不足や現場の声が経営層に届かない組織構造、紙ベースの管理による情報伝達の遅れが品質問題を見逃す原因です。例えば製造現場で発見された小さな異常が開発部門や品質管理部門に共有されないまま放置されることで、大きなトラブルに発展するケースもあります。
設備・工程管理の不備
予防保全不足や工程能力の把握不足、環境管理の甘さ、フィルターなど消耗部品の適切な交換時期の見逃しが品質低下を引き起こします。製造・検査に欠かせない設備の定期点検を怠ると、突発的な故障による生産停止だけでなく、加工精度の低下や異物混入といった品質トラブルが発生しやすくなります。
品質トラブルについて詳しくは「【改善事例も】製造業における不良品発生の原因とは?効果的な対策方法を詳しく紹介!」もご覧ください。
品質向上に取り組む際の考え方とステップ
品質向上を効果的に進めるには、可視化・定量化・課題化・実践化・定着化という5つのステップが重要です。
STEP1.可視化
品質状況を目に見える形にすることで、問題点が一目で分かるようになります。チェックシートや管理図などの品質管理図表を活用します。例えば、不良品の発生箇所を工程ごとに色分けして表示したり、日々の検査結果をグラフ化して掲示したりすることで、製造現場の全員が品質状態をすぐに把握できるようになります。
STEP2.定量化
品質情報を数値化することで、客観的な測定と評価が可能になります。KPIを設定し、統計的手法でデータ分析を行うことが重要です。「不良率○%以下」「工程能力指数Cpk1.33以上」といった具体的な数値目標を設けましょう。
STEP3.課題化
現状と理想の品質レベルの差を明確にし、取り組むべき課題の優先順位をつけます。フレームワークを活用して根本原因を特定します。課題解決に効果的な、なぜなぜ分析や特性要因図(フィッシュボーン図)などの手法を用いて、真の原因を深掘りします。
複数の課題が存在する場合は、顧客への影響度やコストインパクト、改善の難易度などを総合的に評価し、最も効果的な課題から着手することで、限られたリソースを最大限に活用できます。
STEP4.実践化(PDCAサイクルの徹底)
計画・実行・評価・改善のサイクルを繰り返すことで、継続的な品質向上を実現します。
- 計画(Plan)
最初の施策計画時には具体的な目標と実施期限を設定し、担当者と責任を明確にします。
- 実行(Do)
この計画をもとに施策を実行します。ただ実行するだけでなく計画通りの施策を実行する必要があるため、随時計画に沿っているか確認しておきましょう。
- 評価(Check)
評価では設定したKPIに基づいて成果を測定します。目標に未達の場合はなぜ未達だったのか原因をしっかり考えましょう。計画通りに進められなかった?計画に無理があった?そういった要因を理解することで次の改善につながるのです。
- 改善(Action)
最後に、上記の要因分析を経て再度計画を練り直し、実行、評価という一連のプロセスを実施します。
このサイクルを高速で回すことで、スピーディに最適化を図ることが可能になります。
STEP5.定着化
上記のような品質向上の取り組みを一時的なものとせず、効果測定と改善を繰り返して社内に定着させることが重要です。改善によって得られた成果を作業手順書やマニュアルに反映し、誰が作業しても同じ品質を保てる仕組みを構築しましょう。
また、定期的な教育や振り返りの機会を設けることで、改善活動の意義を全従業員が理解し、品質意識が組織文化として根付くでしょう。外部認証(ISO9001など)の取得も、品質管理体制を組織全体に定着させる有効な手段となります。ニチダイフィルタも積層焼結金網のフィルター製品の設計・製造販売において、ISO9001の認定を取得しています。
製造業の品質向上のためのポイント
品質向上を実現するには、事前準備から継続的改善まで、複数のポイントを押さえた体系的なアプローチが必要です。
従業員の意識を向上させる
品質は検査部門だけの責任ではなく、製造に関わる全員が当事者意識を持つことが重要です。QCサークル活動や改善提案制度、朝礼での品質目標の共有などで当事者意識を育てましょう。さらに優秀な改善事例の表彰制度を設けることで、従業員のモチベーションを上げながら意識を向上させることができます。
改善提案について詳しくは「【工場の改善提案ネタ20選】今すぐできる!改善提案ネタをわかりやすく解説!」をご覧ください。
煩雑な作業を効率化する
製造プロセスのムダな工数を削減し、品質向上に取り組むリソースを確保します。よくある効率化の一手としては紙書類のデータ化により管理作業を効率化することが挙げられます。ほかにも日報や検査記録をデジタル化することで、データの集計・分析時間が大幅に短縮され、品質改善活動により多くの時間を割けるようになるでしょう。
さらなる効率化の方法として「【分かりやすい】工場を効率化するには?生産効率を高めるための手法やポイントを解説!」をご覧ください。
標準化・マニュアル化を進める
作業標準書の整備やベストプラクティスの標準化により、誰でも同じ品質で作業できる環境を構築しましょう。熟練者の暗黙知を形式知化し、作業のコツやポイントを文書や映像で残すことで、技術継承がスムーズになります。特に複雑な作業や微妙な調整が必要な工程では、動画マニュアルの方が有効な場合もあります。
ただしこれらの標準書や動画マニュアルは一度作成して終わりではなく、改善内容を反映して定期的に更新しましょう。これにより常に最適な作業方法を維持できるようになります。
標準化について詳しくは「【分かりやすい】製造業における生産性向上とは?重要性や具体的な方法などを詳しい解説!」をご覧ください。
データドリブンなアプローチで進める
管理図による工程監視や実験計画法、多変量解析などの統計的手法を用いて、品質に影響する要因を科学的に特定し改善します。感覚や経験だけに頼らず、収集したデータを分析することで、品質変動の真の原因を突き止めることができます。
例えば、温度・湿度・原材料のロット・作業者など複数の要因が考えられる場合はそれぞれの品質に与える影響を定量的に評価することで、どの要因が影響を及ぼしているのか特定し対策を講じることが可能です。
このようにデータに基づいた意思決定により効果的な品質向上への取り組みを進めることができます。
品質管理について詳しくは「【分かりやすい】品質管理とは?効果的・見落としがちな品質管理方法を詳しく解説!」をご覧ください。
定期的なメンテナンス・機器設備の見直しを行う
老朽化した設備の計画的更新と予知保全を実施することで、設備起因の品質問題を未然に防ぐことができます。特に機器設備では、定期メンテナンスの実施が重要です。
定期メンテナンスを怠ると、設備の突発的な故障やその前兆を見逃してしまい、結果的にさらに大きなトラブルを招く恐れがあります。被害を最小限に抑えるためには、老朽化した設備はもちろん、最新設備であっても定期的なメンテナンスが不可欠です。
また、設備が突発的に故障した場合、生産停止による損失だけでなく、製造工程が中断されることで製品品質にも悪影響を及ぼしかねません。
少なくとも年1回は、すべての機器設備のメンテナンスを実施することをおすすめします。
よく見落とされがちなフィルターの見直し
機器設備の見直しの中でも、フィルターの見直しに着手している現場は少なく、見落とされやすいです。しかし、フィルター性能は製造品質に大きく関係しています。
例えば製造工程で使用される液体原料などに含まれる微細な異物が、製品の品質不良や設備の劣化を引き起こすケースは少なくありません。フィルターのろ過精度を見直し、より細かい粒子まで除去できるタイプに変更することで、製品への異物混入リスクを大幅に低減できます。
また、フィルターの交換時期を適切に管理し、目詰まりによる流量低下や圧力損失を防ぐことも重要です。差圧計を設置してフィルターの状態を常時監視し、適切なタイミングで交換することで、安定した品質を維持できます。
ニチダイフィルタの積層焼結金網フィルターであれば強度が高く、耐熱・耐寒・耐食性が優れており、国産ロケットの製造にも使用されるほど高性能なフィルターとして人気です。一応一品でお客様の製造現場にカスタマイズ可能なため、最適なフィルターをご提供できます。
詳しくはこちらをご覧ください。
サプライチェーン全体での品質管理を強化する
サプライヤー評価基準を明確にし、受入検査体制を強化します。協力企業と品質情報を共有し、連携して改善活動に取り組むことが大切です。自社の製造工程がいくら優れていても、原材料や部品の品質が不安定では、最終製品の品質も保証できません。サプライヤーの製造能力や品質管理体制を定期的に監査し、基準を満たさない場合は改善を要請するか、取引先の見直しを検討しましょう。
継続的に改善に取り組む
品質改善は一度で終わりではありません。改善後も効果を分析し、新たな課題を見つけて改善ステップを繰り返すことで品質水準を維持向上することができます。
市場環境や顧客ニーズは常に変化しており、現在の品質水準が将来も通用するとは限りません。定期的に品質データをレビューし、目標達成度を確認するとともに、新たな改善機会を探しましょう。
小さな改善の積み重ねが大きな成果につながるため、現場からの改善提案を積極的に採用し、実行に移す文化を醸成することも大切です。
ほかにも品質向上につながる改善行動はあります。「【フィルター性能が重要?】工場改善アイデア12選!具体例を交えてわかりやすく解説!」をご覧ください。
品質向上への取り組みには継続的な改善が欠かせない
製造業における品質向上は、可視化・定量化・課題化・実践化・定着化という5つのステップを踏み、PDCAサイクルを回しながら継続的に取り組むことが不可欠です。
上記のようにいくつか品質向上につながる取り組み方法はありますが、中でもフィルターなど見落とされがちな設備の見直しも大きな効果をもたらします。
ニチダイフィルタは積層焼結金網フィルターの生産能力で世界一を誇るメーカーとして、50年以上の実績と技術力でお客様のあらゆるニーズにお応えしています。設計から製造、アフターサービスまでの一気通貫体制により、現場の課題に的確にお応えします。なにかお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。


