
製造現場では、「またフィルターが詰まった」「予定より早く交換時期が来てしまった」といった声が後を絶ちません。月に2回以上のフィルター交換でラインを止めている、想定寿命の半分で破損してしまい品質トラブルが発生した、といった課題を抱えている製造担当者は少なくないでしょう。
フィルターの耐久性が低いと、ただ消耗品としてのコストを増やすだけでなく、製造ラインの停止による機会損失や品質の不安定化、メンテナンス工数の増加という3つの損失をもたらします。本記事では、フィルター耐久性を左右する要因を科学的に解説し、高耐久性フィルターの選定方法と運用ノウハウをお伝えします。
フィルターの耐久性とは?
フィルターの耐久性はひとつの要素で決まるものではなく、複数の要因 から判断されます。
- 材質特性
まず、フィルターの材質にどのような特性があるのかは耐久性に大きな影響を与えます。例えばステンレス製であれば耐食性・耐熱性・機械強度が挙げられます。
- 構造設計
耐久性の要素として、どのような構造設計になっているのかも重要です。一般的にフィルターの構造が複数層構成であれば単層と比較して耐久性は高いといえるでしょう。さらに、メッシュの織り方や焼結方法によって強度が変化し、目詰まりしにくい設計であれば交換頻度も減少します。
- 使用環境条件
耐久性を判断する際に、使用環境は重要です。特に温度・圧力・接触する化学物質の種類によって劣化速度が変わります。例えば高温環境や腐食性の液体に長時間さらされると、素材の劣化が早まり寿命が短くなってしまいます。
- 運用方法
最後に耐久性は適切な流量管理や洗浄頻度、異物の量で変わります。過剰な流量や不適切な洗浄方法で運用してしまうとフィルターを傷め、寿命を縮める原因となります。また、異物が想定よりも多い場合も同様に劣化してしまうスピードを早めてしまいます。
フィルターの耐久性はなぜ重要?
一般的な製造プロセスでもフィルターの耐久性は重要ですが、特に化学品の製造プロセスでは、フィルターの耐久性が製品品質や生産効率に直結します。
- 安定稼働につながるため
まず、製造ラインの安定稼働という観点では、予期せぬフィルター破損によるライン停止は、生産計画を遅らせてしまう原因となり、納期も遅くなってしまいます。これにより企業の信頼度や売上、顧客満足度が低下してしまう恐れもあります。
- 品質を確保するため
次に品質を確保するという観点では、フィルターの劣化によるろ過精度の低下が、最終製品への異物混入や品質バラつきの原因となります。フィルターの耐久性が弱まり破損してしまうと異物を効果的に捕集できなくなり異物混入・コンタミネーションなどにつながってしまうのです。
品質を確保するにはほかにも「製造業における品質向上とは?改善に向けた取り組み方法やポイントなどを詳しく解説!」をご覧ください。
- コストを減らせるため
さらにトータルコストという観点では、耐久性が低いフィルターは年に何度も交換する必要があるため消耗品費だけでなく、交換作業の人件費、廃棄コスト、ライン停止による機会損失まで含めた総保有コスト(TCO)が高くなる傾向があります。
このようにフィルターの耐久性は売上やコストに結びつくため企業の競争力に大きく影響します。よく見落とされがちなフィルターですが、企業にとって重要な機器設備であることを改めて認識しておきましょう。
企業の経営につながるコスト削減について詳しくは「【分かりやすい】工場のコスト削減を成功に導く実践的アイデア10選を詳しく紹介」をご覧ください。
フィルタータイプ別の耐久性比較
| 耐食性 | 耐熱性 | 耐圧性 | |||
| 酸 | アルカリ | 有機溶剤 | |||
| 不織布 | × | △ | 〇 | △ | × |
| ポリエチレン・ ポリエステル | 〇 | 〇 | △ | × | × |
| 金属(単層) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 |
| 積層焼結金網(複数層) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
参考:ユーザーのためのフィルターガイドブック-金属フィルター・スクリーン等編-|日本液体清澄化技術工業会
フィルターといってもさまざまな材質のフィルターが存在します。どの材質のフィルターの耐久性が高いのかを理解しておきましょう。
一般的なフィルターの耐久性は低い
市場に流通する一般的なフィルターは製造現場においては耐久性が低いことが多いです。
- 不織布
不織布を用いたフィルターは低コストですが基本的に耐久性は低いため使い捨てで、特に薬品や化学素材を扱う化学プロセスでの連続使用では交換頻度が高くランニングコストが増えがちです。
- ポリエチレン・ポリエステル
ポリエチレン・ポリエステルを用いたフィルターは連続した多孔質体となっており、耐薬品には優れていますが耐熱性・強度という観点では比較的耐久性は低いでしょう。
- 金属(単層)
単層の金網フィルターは耐熱性・耐食性には優れるものの、上記2つに比べて目詰まりしやすく、機械的強度も十分とは言えません。これらの課題を克服するため、より高度な構造と材質を持つフィルターが求められています。中でも次に紹介する積層焼結金網フィルターは耐久性がほかのフィルターと比べて高いです。
積層焼結金網フィルターの耐久性は高い
積層焼結金網フィルターと呼ばれるニチダイフィルタの独自の技術により製造される積層焼結金網フィルターは強度・耐熱性・耐食性に優れています。その理由は構造設計にあります。
拡散接合技術による一体構造
積層焼結金網フィルターは、複数層のステンレス金網を真空雰囲気中、融点近くの温度で保持することで拡散接合する独自技術で製造されます。この拡散接合により、各層の金網が結合し一体構造となるため、従来の溶接や圧着では避けられなかった接点での剥離リスクが存在しません。

結果として機械的強度が格段に向上し、高圧条件下や振動環境下でも破損しにくい特性を実現しています。積層された各層が互いに支え合う構造は、単層金網の数倍の強度を発揮します。
実際に積層焼結金網フィルターの中でも高耐久性として知られている「ポアメット」は以下のような複数層が結合しているため耐久性が高く、さまざまな業種・業態で使用されています。

ステンレス素材で耐久性が高い
ステンレス鋼(SUS316Lなど)を素材とすることで、優れた耐食性を発揮し、特に多様な化学薬品に対応できます。強酸・強アルカリ・有機溶剤など、幅広い化学物質との接触でも劣化しにくく、長期使用が可能です。また温度対応範囲も広く、-270℃の極低温から480℃以上の高温まで対応できる耐熱性・耐寒性を備えています。
さらに金属材料であるため、熱膨張や収縮による変形も少なく、温度変化の激しいプロセスでも安定した性能を維持します。これらの特性により、化学プロセスの過酷な環境下でも長寿命を実現します。
ろ過精度も高い
複数層の金網を組み合わせた多層構造により、各層の網目が立体的に交錯し、微細で均一なろ過構造が形成されます。この構造では表層で捕捉されなかった粒子が次の層で捕捉される段階的ろ過が可能なため、単層フィルターに比べて格段に目詰まりしにくいです。また各層が異なる役割を担う設計により、粗い層が大きな粒子を捕捉し、細かい層が微細粒子を捕捉することで、圧力損失の上昇を抑えながら長期間のろ過精度を維持できます
フィルターの耐久性を延ばすには?
フィルターの耐久性を伸ばすには、フィルターの材質だけでなくその運用も重要です。
適切な運用条件に設定する
どれだけ高耐久性のフィルターを選定しても、不適切な運用では本来の寿命を発揮できません。まず推奨流量の遵守は重要です。設計流量を大幅に超える運用は圧力損失の急増や早期劣化を招きます。長期的に使用するためには、入口と出口の圧力差を継続的にモニタリングし、規定値を超えたら洗浄または交換を行うようにしましょう。
また定期点検の実施も欠かせず、目視検査で破損や変形の兆候を確認し、差圧データの推移から劣化傾向を把握します。運用記録を蓄積することで、自社プロセスでの最適な交換周期やメンテナンス計画を確立でき、予期せぬトラブルを防ぎながら耐久性を最大限に活用できます。
洗浄・再生を定期的に行う
一般的な不織布フィルターが使い捨てであるのに対し、金属焼結フィルターは構造的に洗浄再生が可能です。特に積層焼結金網フィルターであれば、適切な洗浄によりさらに長期的に使用できます。ニチダイフィルタの洗浄サービスでは、超音波洗浄や化学洗浄など高度な技術により、フィルター内部に蓄積した汚れも除去し、ほぼ新品同様の性能に回復させることができます。通常の運用条件下では数回から十数回の再生使用が可能で、トータルコストを大幅に削減できます。

再生洗浄サービスについて詳しくはこちらをご覧ください。
耐久性の高い積層焼結金網フィルターの導入実績
積層焼結金網フィルターは、幅広い産業分野で高い耐久性が実証されています。
石油化学業界
石油化学業界ではポリマーろ過やガスろ過に使用され、200℃を超える高温環境、10MPa以上の高圧条件、強酸・強アルカリ・有機溶剤などの腐食性物質という過酷な条件下でも長期安定稼働を実現しています。従来の樹脂製フィルターでは数週間で交換が必要だったプロセスにおいて、積層焼結金網フィルターはより少ない交換頻度で運用できています。
医薬品業界
医薬品業界では化粧品や医薬品製造ラインのストレーナーとして使用されており、厳格な品質基準と衛生要求に応えています。特に医薬品製造では製品への異物混入が許されないため、フィルター自体の劣化による金属片脱落は致命的なリスクとなります。
しかし積層焼結金網フィルターは拡散接合による完全一体構造のため、溶接部の剥離や金網の脱落リスクがほぼゼロであり、コンタミネーション防止に大きく貢献しています。実際の使用現場では、従来のフィルターが数ヶ月ごとに破損リスクから交換していたのに対し、積層焼結金網フィルターは年1回の洗浄メンテナンスのみで交換頻度が少なく運用されています。
食品業界
食品業界では液体ろ過や充填ノズルに使用され、食品衛生法に準拠した安全性を確保しつつ長寿命を発揮します。食品製造では頻繁な洗浄・殺菌処理が必須となり、フィルターには繰り返しの温度変化と化学的負荷がかかりますが、積層焼結金網フィルターはステンレス素材の優れた耐食性により、長期的に使用されている現場がほとんどです。
航空宇宙業界
航空宇宙業界では国産ロケットのフィルターとして採用されており、これは最高レベルの信頼性と耐久性が要求される用途での実績として、技術的優位性があることを証明しています。ロケット燃料系では、フィルターの故障が即座にミッション失敗や重大事故につながるため、一切の妥協が許されません。極低温の液体燃料(-200℃以下)から高温の酸化剤まで、極限的な温度環境下でも確実に機能し続ける必要があります。
積層焼結金網フィルターは、この厳格な品質試験をクリアし、連続稼働と激しい振動環境下でも破損や性能低下が見られない耐久性が評価されています。この分野での採用実績は、他のどの産業分野においても十分な耐久性を発揮できることの確かな証明となっています。
詳しくはこちらをご覧ください。

出典:JAXA
フィルターの耐久性で企業の競争力は大きく変わる
フィルターの耐久性は企業にとって非常に重要で、耐久性が低いフィルターを使い続けていると交換コストが増えるだけでなく、金属片の脱落や異物混入リスクが高まるため企業の信頼度や売上にも影響します。そのため耐久性が高く、ろ過精度も高い高性能なフィルターをこの機会に導入することをおすすめします。
特に化学や薬品の製造プロセスでは、特殊な薬品や素材を使うため一般的なフィルターでは劣化スピードが速く交換コストやコンタミネーションリスクが高まってしまいます。
そこでおすすめなフィルターがニチダイフィルタの「積層焼結金網フィルター」です。積層焼結金網フィルターは、拡散接合技術による高強度構造で、ステンレス素材の優れた耐久性、多層構成による長寿命という3つの特長により、化学・薬品の製造プロセスでの過酷な条件下でも長期的に安定稼働ができます。航空宇宙産業での採用実績が示すように、最高レベルの信頼性が要求される用途でも実証されています。
ニチダイフィルタは積層焼結金網フィルターの生産能力で世界一を誇るメーカーとして、50年以上の実績と技術力でお客様のあらゆるニーズにお応えしています。設計から製造、アフターサービスまでの一気通貫体制により、現場の課題に的確にお応えします。なにかお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。


