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ブログ・コラム

焼結フィルターとは?仕組みやメリット、次世代技術である積層焼結金網フィルターについても解説!

2025/10/15

  • 業務改善の紹介

製造現場では、さまざまな課題が見受けられますが、中でもフィルターの目詰まりによる生産ラインの停止や頻繁な交換作業による人件費の増加、ろ過精度不足による品質問題など、フィルターに関する課題は多く見られます。そこでフィルターを新しく切り替えようとしている方も少なくありません。

本記事では数あるフィルターの中でも、多くのメリットがあり、人気の「焼結フィルター」について基本概要から最新の積層焼結技術まで詳しく解説します。他材質フィルターとは根本的に異なる構造により、長寿命・高精度・低メンテナンスを実現し、多くの製造現場で劇的な改善効果を上げています。

さらにニチダイフィルタの独自技術を用いた、次世代の焼結フィルター「積層焼結金網フィルター」についても、その仕組みとメリットなどをわかりやすく解説しますので、ぜひご覧ください。

焼結フィルターの基本概要

そもそもフィルターとは、液体やガス中の不純物などを分離する「ろ過」を行うための装置です。フィルターは不織布や紙などさまざまな材質がありますが、中でも焼結フィルターはその豊富なメリットから多くの業界で使用されています。

焼結フィルターとは

焼結フィルターとは、金網や金属粉末などさまざまな「ろ材」を高温で焼き固めて作られる金属製の多孔質構造のフィルターのことを指します。「焼結フィルター」と一言で言っても、ろ材によって焼結フィルターの種類は分かれており、「焼結金網フィルター」や「焼結粉末フィルター」などさまざまな種類が存在します。

焼結フィルターは主に不純物除去に使用されるほか、発泡処理や粉体処理など、幅広い用途で活用されています。

以下の画像のフィルターは後述しますが、ニチダイフィルタ独自の積層焼結技術で製造した積層焼結金網フィルターです。さまざまな種類や豊富な使用用途に利用されており、高性能なフィルターとして国産ロケットにも使われています








詳しくはこちらをご覧ください。


焼結フィルターの種類

焼結フィルターはろ材によってさまざまな種類に分けられます。主にろ材の種類としては以下の9つがあります。

▶金網

最も一般的で性能の高いろ材で、さまざまな織り方がされます。

▶パンチングプレート

鋼板を機械で打ち抜いて多数の穴を開けたろ材です。一般的には打ち抜き鋼板と呼ばれています。

▶ノッチワイヤー

金属線に突起をつけたワイヤーを枠に巻き付けることによりできたスリット(溝)でろ過を行うろ材です。

▶ウェッジワイヤースクリーン

楔形の断面形状を持つウェッジワイヤーを支持体に溶接し、それぞれのウェッジワイヤー間をスリット状に加工したろ材です。

▶焼結金属粉末ろ材

2~3種類の金属粉末を同時に焼結したろ材です。

▶焼結積層金網

複数枚の金網を数層に重ね合わせて焼結したろ材です。

▶焼結巻線ろ材

金属の平線を芯に巻き付けて焼結したろ材です。

▶焼結金属不織布ろ材

2~3種類の繊維径と金属短繊維不織布を焼結したろ材です。

▶その他の金属ろ材

ほかにもさまざまな金属ろ材があります。

引用:ユーザーのためのフィルターガイドブック 16頁|日本液体清澄化技術工業会 

上記の画像のように、使用用途・目的によってろ材は決定されます。このろ材によって焼結フィルターの特性は大きく変わります。

焼結フィルターの基本構造

焼結フィルターはろ材や織り方によってさまざまな構造があります。ここでは代表的な焼結金網フィルターの基本構造を紹介します。

焼結金網フィルターの構造

焼結フィルターの中でも汎用性が高く、幅広く使用されている焼結金網フィルターは主に以下の4つの構造になっています。

▶平織

焼結金網フィルターの中でも最も基本的な織り方です。縦線と横線が一定の間隔を保ち、一本ずつ交互に交わっており正方形の網目になっています。




引用:ユーザーのためのフィルターガイドブック 20頁|日本液体清澄化技術工業会 


▶綾織

縦線と横線が一定の間隔で交わっており、互いに2本以上またいでいる織り方です。より細かい網目になっているため、平織よりもさらにろ過精度が高くなります。




引用:ユーザーのためのフィルターガイドブック 20頁|日本液体清澄化技術工業会 



▶平畳織

横線が交互に重なるように並んだ織り方です。




引用:ユーザーのためのフィルターガイドブック 20頁|日本液体清澄化技術工業会 



▶綾畳織

綾織と平畳織を組み合わせたような織り方です。横線が交互に重なり、かつ互いに2本以上またいでいます。ほかの織り方と比較すると、さらにろ過精度を高くすることが可能です。




引用:ユーザーのためのフィルターガイドブック 21頁|日本液体清澄化技術工業会 


焼結フィルタの材質


焼結フィルターの材質としては、主にオーステナイト系ステンレス鋼が使用されています。ステンレスを使用するメリットとしては耐熱・耐圧・耐酸化性で高く、汎用性が高いという特長があります。

また、ほかには用途に応じてフェライト系ステンレス鋼や耐食・耐熱合金、ブロンズなどがあります。それぞれコスト面や性能面で以下のような特徴があります。



材質種類特徴
オーステナイト系ステンレスSUS316、316Lなど汎用性が高い
フェライト系ステンレスSUS430安価、磁性あり
ニッケル合金インコネル耐食性が高い
モネル耐食性が高い、フッ素ガスに用いられる
ハステロイ高価、耐食性が高い、溶接が難しい
チタン合金チタン、チタン合金耐食性が高い、軽量



当社ではステンレス・ハステロイ・インコネルに実績がありますお客様のご要望に応じて材質などのご相談は受け付けております。お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら


焼結フィルターの用途 

焼結フィルターは液体・ガス・粉体処理まで幅広い用途に対応でき、食品・医薬品・石油化学・自動車など多様な製造現場で活用されています。


用途特徴
ろ過液体やガス、ポリマー中の不純物を除去する
発泡液体中にガスを均一に分散させる
粉体処理給気では粉体が凝固しないようにする、脱気では発塵を押さえる
防護粉塵やガス、衝撃などを防ぐ
その他消音やデザインなど

ろ過(液体、ガス、ポリマー)


先述したように、焼結フィルターの主な用途としてはろ過が挙げられます。ろ過は大きく以下の3種類に分けられています。

▶液体

さまざまな液体や流体の中に混ざっている特定物質を焼結フィルターの特性である多孔性を生かして分別・取り除きます例えば食品業界では飲料水などの液体中にある異物を除去するために使用されたり、環境・水処理業界では浄水・排水処理のために利用されたりしています。

▶ガス

液体同様にガス中の微粒子・異物除去を行います。半導体業界では半導体の製造工程において超清浄なガスが必要となるため、ガス中の粒子を取り除くために利用されています。

▶ポリマー

こちらも液体やガス同様にポリマーから不純物を除去するために使用されます。


発砲

多孔性を生かして、液体中への均一で微細なガス分散により、化学反応の促進や排水処理での酸素供給などを行います。


粉体処理(給気、脱気)

小麦粉などの粉粒状物質は、粒子が非常に小さく軽いため、網目を通過しにくくなる傾向があります。さらに、粉体には凝集性という性質があり、一度固まってしまうと流動性が大幅に低下してしまいます。

この問題を解決するため、粉体間に均等に空気を供給する必要があります。「給気」作業では、焼結フィルターの多孔質構造を活用し、全体に均一に気体を送り込みます。これにより粉体の凝固を防止しながら、効率的なふるい分けも可能となります。






一方、「脱気」とは空気を抜く処理のことです。代表的な例として脱気充填があります。これは、オーガースクリューで搬送される粉体に含まれた空気を、脱気フィルターを通じて真空状態で除去する技術です。この処理により、粉体の発塵を抑制し、嵩密度を向上させることができます。



また、脱気処理には他のメリットもあります。粉体の発塵が抑えられるため、作業環境でのトラブルを防止できるのです。ここでも焼結フィルターの微細な多孔質構造を活用し、効率的に空気を除去しています。


防護

設備や機器に焼結フィルターを設置することで粉塵やガス、衝撃などから保護します。他材質のフィルターよりも材質が金属なため耐久性が高くなるため、強固な防護対策として有効です。


その他

ほかにも消音や成形型、デザインなど多様な用途があります。

当社ではお客様のさまざまな用途に合わせてフィルターの開発から提案・設計、製造、アフターサービスまで一貫して行います。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。


焼結フィルターのメリット


焼結フィルターを導入することで以下のようなメリットがあります。


高精度なろ過が実現できる

先述したように、焼結フィルターは製造過程で形成される均一な多孔構造により、他材質フィルターと比較して安定した高精度ろ過を実現します。このろ過精度は異物の除去率を高め、より純粋・清浄な状態に近づけることが可能です。結果的に製品の品質向上に直結し、顧客満足度の向上にもつながります。


交換頻度・コストを大幅に削減できる

焼結フィルターは材質が金属のため、他材質フィルターと比べて耐久性が高く、数倍から数十倍の寿命が特長です。この長寿命により交換作業の頻度を大幅に削減でき、作業員の負担軽減・交換コスト・生産ラインの稼働率向上に貢献します。

さらに他材質フィルターと比べて大きな点が洗浄による再利用が可能なことです。これにより、何度でも大きな劣化がない限り繰り返し焼結フィルターを利用できるため、ランニングコストの大幅な削減につながり、企業の利益率向上に役立つでしょう。

当社ではアフターサービスとして再生洗浄サービスを提供しています。以下のように徹底的な洗浄を行い再度使用できる状態にしてお戻しさせていただきます。


詳しくはこちらをご覧ください。




さまざまな用途に使用できる

焼結フィルターは他材質フィルターが使用できない製造環境・用途でも利用できます。高温・高圧条件や腐食性の強い液体環境でも安定した性能を発揮するため、化学工業、食品製造業、医薬品製造業など、幅広い業界での活用が進んでいます。用途の制約が少なく、多様なニーズに対応できる汎用性の高さが特長です。

焼結フィルター導入時の注意ポイント

焼結フィルターを導入・切り替えようとする際には、以下のようなポイントを理解しておきましょう。

用途に応じた適切な仕様選定を行う

焼結フィルターの性能を最大限発揮するには、使用環境に最適な仕様選定が欠かせません。ろ過対象の粒子サイズ、処理流量、使用温度・圧力範囲、化学的適合性などを詳細に理解・分析し、最適な孔径、材質、構造を選択する必要があります。

当社ではお客様と入念な打ち合わせを行い、用途に最適化されたフィルターを提案・製造できます。


長期的な視点で評価する


焼結フィルターは従来品と比較して初期投資額が高くなる傾向にありますが、長期的な視点での評価が重要です。交換頻度の削減、洗浄による再利用、製品品質向上による収益改善効果などを総合的に評価すると、3~5年スパンでの投資回収が可能です。単年度の費用ではなく、トータルコストでの判断が適切な導入につながります。

ニチダイフィルタの積層焼結金網フィルターとは

積層焼結金網フィルターは、複数のステンレス金網を重ね合わせて焼結する独自技術により、従来の焼結フィルターを上回る性能を実現したフィルターです。







極限環境でも確実に機能する技術力の証明として、国産のH-IIAロケットやH3ロケットに搭載されています。高い品質と信頼性で製造現場の安心につながるため、自信をもっておすすめできます。

H-IIAロケットプロジェクトについてはこちらをご覧ください。


積層焼結金網フィルターの仕組み


異なる網目の金網を何層にも重ねて焼結することで、各層の金網が互いに交錯し、微細で均一なろ孔を形成する理想的なろ過構造を実現しています。

具体的には独自の拡散接合技術により産業用フィルターを効果的に生産しています。この技術ではステンレス素材を真空状態において、融点近くの温度域で保持することによって、拡散現象を発生させます。この現象により、積層された素材の結晶が接点をまたぐかたちで再形成されるため、さらなる一体構造化につながるのです。この拡散接合技術を用いることで、強固な積層焼結金網フィルターを製作できます。






積層焼結金網フィルターの特長


積層焼結金網フィルターは、以下のような特長があります。

▶強度

先述したように真空雰囲気中での高温拡散接合により、各層の金網が結晶レベルで一体化するため、圧倒的な機械的強度が強みのひとつです。従来の金網フィルターと異なり、層間の剥離や変形が生じにくく、高圧・高流量条件下でも安定した性能を維持します。また、耐熱性・耐寒性にも優れており、幅広い温度範囲での使用が可能です。この高強度特性により、過酷な環境でも長期間にわたって信頼性の高い性能を提供します。

▶ろ過精度

積層された各層の金網が互いに交錯することで、微細で均一なろ孔構造を形成します。これにより、従来の単層金網では捕捉困難な微小粒子まで除去が可能になるろ過精度を誇ります。業界でも指折りのろ過精度により、多くの企業に選ばれております。

また、金網の積層枚数や種類の組み合わせを調整することで、用途に応じた最適なろ過精度の設計が可能です。ろ過精度でお悩みの場合はぜひお気軽にご相談ください。

▶洗浄性

積層焼結金網フィルターは従来フィルターよりも強度が高いため、従来は難しかった高圧洗浄や逆流洗浄が可能です。この洗浄により目詰まりした粒子を効率的に除去できます。また、先述した洗浄サービスを利用すれば再利用が可能となり、大幅なコスト削減を実現します。化学的耐性にも優れているため、各種洗浄剤や溶剤を使用した洗浄にも対応可能です。

製品ラインナップとその特徴

ニチダイフィルタでは積層焼結金網フィルターを使用した製品を取り扱っています。

製品用途特長
ポアメット液体・ガス・ポリマーろ過、その他多くの用途あり高強度・耐熱性・耐寒性・高密度・洗浄性
ポアフロ整流、粉体処理(給気・脱気)、粉体処理(架橋防止)均一性・整流性・排出性・流動性
ボンメッシュ液体・ガス・ポリマーろ過、その他多くの用途あり高精度・洗浄性・透過性・耐久性




▶ポアメット

ポアメットは、4層目5層目に平畳織金網を使用して補強しており、耐圧強度はあらゆるフィルタメディアの中で最大です。2~200ミクロンの幅広いろ過粒度で、幅広い用途をもつ汎用型フィルターです。



▶ポアフロ

ポアフロは、平畳織金網を2層または3層に重ねて、焼結、圧延を施し一体化した多機能多孔質材です。数十ミクロンから約100ミクロンの均一なサイズの細孔が分布し、さらに均等な圧力損失分布を有するパネルです。



▶ボンメッシュ


ろ材部に洗浄性に優れた平織金網を積層し、補強部材としてパンチングメタルを配置して一体焼結したタイプのフィルターです。



上記3つの製品で多様なニーズに対応しています。このほかにもお客様の要望に合わせた柔軟な対応を行います。

詳しくはこちらをご覧ください。

積層焼結金網フィルターの実用例

積層焼結金網フィルターは国産ロケットへの搭載実績をはじめ、世界トップクラスのシェアと信頼性で多くの製造現場の効率化に貢献しています。

飲料水製造工程におけるフィルター活用

飲料水製造工程では、原料液の清澄化や最終製品の品質安定化において積層焼結金網フィルターが重要な役割を果たしています。積層焼結金網フィルターの特長である高精度なろ過により、効果的な不純物・異物の除去を行えます。

例えば果汁飲料では果肉や繊維質の除去、炭酸飲料では微細な沈殿物の捕捉、茶系飲料では茶葉の微粒子除去などに使用されています。

化学製品製造工程におけるフィルター活用

化学製品の製造では、原料中の不純物除去が最終製品の品質に直結するため、積層焼結金網フィルターが多く採用されています。樹脂製造における重合反応前の原料液清浄化、塗料製造における顔料の粒度調整など用途に応じた精密なろ過を実現します。

また積層焼結金網フィルターは耐食・耐薬品性に優れているため、強酸・強アルカリ環境でも安定した性能を発揮し、化学製造工程の特殊な環境下での使用も可能です。これにより従来フィルターと比較して生産ラインの稼働率向上と、製品品質の安定化を同時に実現できます。

医薬品製造工程におけるフィルター活用

医薬品製造では極めて高い清浄度が要求されるため、積層焼結金網フィルターの高精度ろ過性能が大きく役立っています。注射剤や点滴液の製造では微細な異物除去、液剤では不溶性物質の除去など、厳格な品質基準をクリアするために積層焼結金網フィルターは有効です。

また、洗浄による再利用により、高額な使い捨てフィルターと比較して大幅なコスト削減を実現し、企業の収益性向上に貢献しています。

積層焼結金網フィルターを導入して製造現場の課題を解決しよう

焼結フィルターは、従来フィルターと比べて強度が高く高寿命で、高精度なろ過を実現できます。これにより交換頻度を大幅に削減し、メンテナンス工数の軽減と生産ライン稼働率の向上により、製造現場の効率化に大きく貢献します。

中でもニチダイフィルタが独自技術を持っている「積層焼結金網フィルター」は、複数の金網を重ね合わせた独自の多層構造により、さらに優れたろ過性能と耐久性を実現します。国産ロケットにも搭載される信頼性の高さで、さまざまな用途でも安定した性能を発揮します。

ニチダイフィルタは積層焼結金網フィルターの生産能力で世界一を誇るメーカーとして、50年以上の実績と技術力でお客様のあらゆるニーズにお応えしています。設計から製造、アフターサービスまでの一気通貫体制により、現場の課題に的確にお応えします。なにかお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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