
製薬製造において、コンタミネーション(汚染・混入)の発生は製品品質を左右します。わずかな異物混入や微生物汚染が、患者様の健康被害や製品回収につながるリスクがあります。そのためGMP(医薬品製造管理及び品質管理基準)では厳格なコンタミネーション管理が求められており、発生させないことが大前提となります。
そこで本記事では、コンタミネーションの基礎知識から発生原因、具体的な対策方法などを網羅的に解説します。
コンタミネーションとは?
コンタミネーション(contamination)とは、本来存在すべきでない物質が製品や製造環境に混入・汚染することを指します。語源は「汚す」を意味するラテン語に由来し、製造業全般で使用される用語ですが、特に製薬業界では患者の生命に直結するため、他業界以上に厳格な管理が求められます。
実際に医薬品を製造する現場では、目に見えない微量の異物や微生物であっても重大な品質問題となるため、ppmレベル、場合によってはppbレベルでの管理がされています。GMPガイドラインでもコンタミネーション防止は中核的要求事項として位置づけられています。
コンタミネーションを防止する重要性
先述したように、コンタミネーションは製品の品質に大きな悪影響を及ぼします。
- 薬効面
有効成分の分解や変質により期待される治療効果が得られなくなる可能性があります。
- 安全性
異物混入による局所刺激やアレルギー反応、微生物汚染による感染症、発熱性物質による発熱反応など、患者様への直接的な健康被害リスクが生じます。
- 企業への影響
製品回収による数億円規模の損失、行政処分による製造停止、ブランドイメージの失墜、医療機関からの信頼喪失など、経営を揺るがす事態に発展します。
そのためコンタミネーションを発生させない、予防的な管理体制の構築が、結果的に最大のコスト削減となるのです。
コンタミネーションが発生する原因
コンタミネーションが発生してしまう原因はいくつかあります。それぞれ原因を見ていきましょう。
ヒューマンエラーによる汚染
コンタミネーションが発生する大きな要因の一つとして、ヒューマンエラーが挙げられます。例えばクリーンルーム内での不適切な作業や手順書と異なる作業を行ってしまった場合に多いです。特に問題となるのは、清浄度の異なるエリア間を移動する際の手順が異なっていたり、更衣の手順が間違っていたりする場合です。このように手順書や決められたルールを破ってしまうとコンタミネーションが高い確率で発生してしまいます。
また、作業者の健康状態が良くない場合もコンタミネーションが発生すると考えておきましょう。インフルエンザや風邪、皮膚の疾患などでまき散らされたウイルスや落ちた皮膚などが、製品や原料に混ざることでコンタミネーションとなってしまいます。
さらに、長時間労働による疲労や注意力が低下している場合も、ヒューマンエラーを誘発します。定期的な教育と適切な作業環境整備が重要です。
原材料からの汚染
原材料自体に含まれる不純物や異物が、最終製品のコンタミネーションのもととなるケースは少なくありません。そのため原料の受入れ検査が不十分だと、微生物汚染や重金属、予期せぬ不純物が製造工程に持ち込まれます。特に天然由来原料や海外調達原料では、サプライヤーの品質管理レベルにばらつきがあり、ロット間変動も大きくなります。
品質管理について詳しくは「【分かりやすい】品質管理とは?効果的・見落としがちな品質管理方法を詳しく解説!」をご覧ください。
製造設備・器具からの汚染
製造設備や器具が、適切に管理されていない場合もコンタミネーションが発生します。よく見過ごされがちなのが、製造ラインでの配管やバルブの経年劣化です。製薬を製造時には刺激や反応が大きい薬品を使うことがあるため、設備の劣化・破損が発生しやすいです。一度設備が破損してしまうと、金属片やガスケット片が剥離して製品に混入することもあります。
また、製造設備の中でもフィルター自体からのパーティクル脱落は多く見落とされています。コストを抑えるために品質の低いフィルターを使用してしまうと、フィルターで濾過するはずの異物が捕集されることなく、製造ラインに入ってきてしまい悪影響を及ぼします。そのためフィルターを含めた製造設備や器具の見直しは欠かせません。
作業環境による汚染
適切な管理ができていない作業環境であれば広範囲なコンタミネーションを引き起こします。例えばクリーンルームの空調システムが適切に機能していないと、外部からの粉塵や微生物の侵入を許してしまいます。HEPAフィルターの破損や目詰まり、差圧管理をしっかりと実施していない場合も同様に、清浄度が低下してしまい汚染されやすくなってしまいます。
また、作業現場の温湿度管理を適切に行わず温度・湿度が高すぎる環境にしてしまうと、結露が発生しやすくなり微生物の増殖や静電気によるパーティクル付着を招いてしまいます。
さらに5Sの一つである「清掃」が行き届いておらず、ホコリやゴミなどが散乱している場合も汚染源となる微生物や異物が発生しやすくなり、製品の品質に悪影響を及ぼしてしまいます。
5Sについて詳しくは「【分かりやすい!】 5S活動とは?その目的やメリット、実践的に進める方法や手順などを詳しく解説!」をご覧ください。
今日からできるコンタミネーション対策5つ
コンタミネーションを発生させないためには以下のような対策に取り組むことで発生リスクを抑えられます。
製造手順やマニュアルを見直す
マニュアルをこの機会に見直し、現場の方法と理想の方法をうまく組み合わせたマニュアルを作成しましょう。このように理想の方法だけでなく、現場の効率的な方法や独自の環境要因に合わせたマニュアルを作成することで、ヒューマンエラーをできるだけ削減することができ、コンタミネーション発生の防止につながります。
マニュアルを作成したら定期的に見直し・修正ができるような仕組みを整えましょう。どれだけ効率的・現場に即した方法をマニュアルとして落とし込んでも、逸脱事例やヒヤリハットは起きてしまいます。そこでそれらの情報を反映させることで、さらに実効性を高めるのです。
このように作成したマニュアルを作業者へ教えるには、単に手順を教えるだけでなく、なぜその手順が必要なのか、リスクは何かを実際に図や事例を見せながら教えると効果的です。新人教育だけでなく、ある程度年月を重ねた中堅やベテランにも定期的に研修などでインプットし、コンタミネーションのリスクを共有することで、慣れや慢心から起こるヒューマンエラーを抑えられます。
原材料管理を徹底する
原材料の品質は製品の品質に直接的にえいきょうするため、受入から使用まで一貫した管理が必要です。受入検査では、CoA(分析証明書)の確認だけでなく、自社での試験による品質確認を行います。特に初回取引先や変更があった原料については、より詳細な分析を実施します。
次に保管時には、適切に温湿度管理された専用エリアを設け、先入先出しを徹底します。容器の材質や密閉性も重要で、湿気や酸素の影響を受けやすい原料には適切な包装が必要です。この時トレーサビリティ確保のため、ロット番号管理を厳格に行い、使用記録を詳細に残します。
最後にサプライヤー監査を定期的に実施し、品質管理体制を評価することで、原材料の供給元からの汚染リスクを最小化できます。
製造ラインの洗浄・滅菌を徹底する
製造設備からのコンタミネーションを抑えるために、定期的な製造設備・器具の洗浄・滅菌は徹底しましょう。何度も行う作業のためCIP(定置洗浄)やSIP(定置滅菌)システムを導入できれば、分解せずに洗浄・滅菌でき、作業者由来のコンタミネーションの発生やコストを削減できます。
洗浄する際の洗浄剤の選定では、洗浄力だけでなく、設備の残留リスクや材質への影響も考慮しておきましょう。そして洗浄手順や洗浄剤濃度、温度、時間などの条件を改めて文書化し、再現性を確保することが重要です。
製造設備を専用化する
製造設備の専用化は、交差汚染を防ぐ大きな役割を持ちます。複数製品で共用する場合でも、アレルギー物質や強力な薬理活性を持つ製品については専用ラインを検討すべきです。
設備材質を選定する際は、耐食性・耐酸性・耐薬品性などに優れた材料を使用しましょう。特に製品と接触する部分には、溶出や吸着のリスクが低い材質を選びます。
専用化する製造設備の中でも先述したようにフィルターの選定は品質を大きく左右します。高精度で安定した濾過性能を持ち、かつフィルター自体からパーティクルが脱落しない製品を選ぶことが重要です。繰り返し使用可能で洗浄・滅菌に耐える耐久性があれば、ランニングコストの削減にもつながります。
積層焼結金網フィルターがおすすめ
ニチダイフィルタの積層焼結金網フィルターは、従来フィルターと比べて高性能なフィルターとして国産ロケットにも採用されるほど人気なフィルターです。精密に織られた複数層の金網を積層し、真空中で焼結することで、均一で安定したろ過構造を実現しています。この構造により、高精度なろ過が可能で、製品の品質を高められます。
また、独自の焼結技術により複数の金網が一体化しているため、使用中に金属片が剥離する心配がありません。また、機械的強度が高く、繰り返しの洗浄・滅菌(オートクレーブ滅菌、CIP、SIPなど)に対応できます。長期使用でも性能が安定しており、バリデーション対応も容易です。
ほかにもお客様一人一人のご要望に合わせたフィルターの作成が可能です。まずはお気軽にこちらからお問い合わせください。

作業環境を改善する
コンタミネーションを防ぐには作業環境を適切な状態に保つことが重要です。具体的な取り組みとしては、まず各エリアの清浄度クラス(ISOクラス5〜8など)をしっかりと設定し、パーティクルカウンターや微生物モニタリングで定期的に確認しましょう。
つぎに差圧管理では、清浄度の高いエリアを陽圧に保ち、汚染された空気の流入を防ぎます。動線設計では、人や物の流れを一方通行にし、清浄度の異なるエリアを明確に区分します。さらにエアロックやパスボックスの適切な使用により、エリア間の汚染移行を防止します。
そして適切な温湿度になるように高精度なセンサーを導入し、厳格な温湿度管理を徹底しましょう。このように適切な作業環境を整えることでコンタミネーションの発生確率を大幅に抑えることができるのです。
コンタミネーション対策の成功事例
ここでは、実際にニチダイフィルタの積層焼結金網フィルターを導入し、コンタミネーション問題を解決した製薬メーカーの事例をご紹介します。
導入前の課題
製薬メーカーA社では、注射剤の製造ラインにおいて、製品中に微細な金属粒子が混入する問題に悩まされていました。従来使用していたフィルターからの金属片脱落が原因と疑われ、年間数回の製品ロス(1回あたり約500万円相当)が発生していました。
さらに、既存フィルターは洗浄・滅菌を繰り返すうちにろ過性能が低下し、約6ヶ月ごとの交換が必要でした。このため、フィルター交換コストとチョコ停による生産停止による損失がたびたび発生していました。
品質管理部門からは「ppmレベルでの異物管理を徹底しなければGMP適合性に疑義が生じる」との指摘があり、抜本的な対策が急務となっていました。
ニチダイフィルタを選んだ理由
A社がニチダイフィルタの積層焼結金網フィルターを選定した理由は3つあります。
1.高い構造安定性
独自の真空焼結技術により、複数の金網層が一体化しているため、使用中や洗浄時に金属片が剥離するリスクが極めて低い点が評価されました。
2. 安定したろ過性能
精密に制御された多層構造により、微粒子も安定して捕集でき、長期使用でもろ過精度が維持される点が決め手となりました。従来フィルターでは目詰まりによる差圧上昇が課題でしたが、積層焼結金網フィルターは均一な孔構造により目詰まりしにくい設計となっています。
3. トータルコストの削減
初期投資は従来品よりも高くなってしまいましたが、交換頻度が年2回から3年に1回へと大幅に減少する試算が示されました。加えて、製造ライン停止時間の短縮や製品ロス削減を考慮すると、多くのコスト削減が見込まれる点が経営陣を説得する材料となりました。
導入した結果
積層焼結金網フィルターを導入した結果、金属粒子混入によるコンタミネーションは完全にゼロとなりました。製品の品質試験においても、ppmレベルでの異物検出は一切なく、GMP監査でも高い評価を獲得しています。
また、フィルターの交換頻度が減少したことで、製造ラインの稼働率が大幅に向上しました。加えて計画外停止も減ったことで、生産計画の安定性が飛躍的に高まりました。
さらにフィルター交換作業の頻度が減少したことで、作業者の負担が軽減され、より付加価値の高い業務に時間を割けるようになりました。また、コンタミネーション発生時の原因調査や報告書作成といった非生産的業務からも解放されています。
コンタミネーションを防止して質の高い製薬を
製薬製造におけるコンタミネーション管理は、患者様の安全と製品品質を守る重要な課題です。本記事で解説したように、コンタミネーションは人為的要因、原材料、設備、環境など多岐にわたる原因から発生します。
効果的な対策には、手順書の徹底や適切な原材料管理、洗浄・滅菌、作業環境改善など、さまざまなアプローチが必要です。中でも、製造設備、特にフィルターの適切な選定は欠かせません。積層焼結金網フィルターのような高性能で安定したろ過技術を導入することで、パーティクル除去の確実性が高まり、長期的なコスト削減も実現できます。
ただし、コンタミネーション管理は一度構築すれば終わりではなく、継続的な改善活動が求められます。まずは出来る範囲の取り組みから進めてみましょう。
ニチダイフィルタは積層焼結金網フィルターの生産能力で世界一を誇るメーカーとして、50年以上の実績と技術力でお客様のあらゆるニーズにお応えしています。設計から製造、アフターサービスまでの一気通貫体制により、現場の課題に的確にお応えします。なにかお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。


