
「スラリーの固液分離がうまくいかない」「ろ過分離を行っているがすぐに目詰まりを起こしてしまう」——製造現場では、こうした悩みを抱える技術者が少なくありません。固液分離はシンプルなプロセスに見えて、扱うスラリーの性状や使用環境によって最適な手法・機器が大きく異なります。本記事では、固液分離の基礎から方法の比較、そして現場課題を解決するフィルター選定のポイントまでをわかりやすく解説します。
そもそもスラリーの固液分離とは
固液分離とは、液体中に固体粒子が分散した混合物(スラリー)から固体成分と液体成分を分ける操作のことです。化学素材の製造プロセスでは精製・回収・廃液処理など多くの場面で行う工程であり、分離の精度や効率が製品の品質を左右します。
固液分離が必要な理由
固液分離が求められる目的は大きく3つあります。
- 有価物の回収
- 滓の除去
- 排水処理
まず、大きな目的の一つとして有価物の回収が挙げられます。スラリーは不要なものだけでなく、企業活動にとって必要なものも存在します。そのため固液分離を行うことでスラリー中に分散する有用な固体成分や、液体中の有価物質を取り出すために行われます。このように有価物を回収することで別の製品として活用できるなどメリットがあるため固液分離が行われているのです。
次に滓(おり)の除去です。滓とは、不要な固形分や液体が沈殿したものです。こうしたスラリー中の不要な沈殿物は製品品質を低下させ、装置の劣化や故障の原因にもなります。塗料・インクではノズルの詰まりや色ムラ、日本酒では味や香りへの悪影響が生じるため、固液分離によって滓を除去しているのです。
最後に、排水処理のため行われていることが多いです。有価物を回収したスラリーはそのまま廃棄することはできません。そのまま排水してしまうと製造工程で発生する廃液に含まれる有害物質や微生物が残ってしまい環境にとって悪影響を及ぼす可能性があります。実際、水質汚濁の主な原因となる工業排水は、その処理について「水質汚濁防止法」という法律で規制されています。こうした環境規制に対応するために固液分離は行われているのです。
固液分離の主な方法と比較
固液分離の手法には一般的にろ過・遠心分離・沈降分離など複数の選択肢があります。それぞれ原理・適性・コストが異なるため、スラリーの性状や処理目的を踏まえた方法を選定する必要があります。ここでは代表的な手法の特徴を整理し、化学素材業界での適性を比較します。
| 方法 | メリット | デメリット | 適したスラリー |
| ろ過分離 | 設備シンプル・精度調整しやすい | 目詰まりリスク | 幅広い粒子径 |
| 遠心分離 | 高速・連続処理可能 | 設備・メンテコスト高 | 微細粒子・大量処理 |
| 沈降分離 | 低コスト・シンプル | 処理時間が長い | 粗大粒子・前処理用途 |
ろ過分離
ろ過分離は、多孔質のフィルター媒体にスラリーを通過させ固体粒子のみを捕捉する方法です。設備がシンプルで導入コストが比較的低く、粒子径に応じたフィルター選定で幅広い用途に対応できます。一方で、固形分濃度が高いスラリーでは目詰まりが生じやすく、フィルターの素材・構造選定が性能を大きく左右します。
化学素材業界では、扱うスラリーの種類が多岐にわたり、粒子径・粘度・化学組成もさまざまです。ろ過はフィルターの仕様変更だけで幅広い条件に対応でき、スケールアップや工程変更にも柔軟に対応できる点が特長のため、多くの現場で使用されています。また、設備のコンパクトさや洗浄・再生による継続使用が可能な点も評価されています。
遠心分離
遠心分離は、高速回転による遠心力で固体と液体を分ける方法です。微細粒子の分離や連続処理に適しており、大量処理が必要な工程で多用されます。ただし設備コストやメンテナンスコストが高く、粘度の高いスラリーや粒子径が極めて小さいスラリーでは分離効率が低下するケースもあります。
沈降分離
沈降分離は、重力によって固体粒子を自然沈降させ上澄み液と分離する方法です。設備が簡単でコストが低い反面、処理に時間がかかり、微細粒子や比重差が小さいスラリーには不向きです。前処理や粗大粒子の除去工程として他の分離方法と組み合わせて使われることが多くあります。
ろ過分離でよくある課題
上記のように3つの固液分離方法がありますが、多くの現場ではろ過分離が一般的です。ただ、ろ過分離の工程は「ただフィルターを通すだけ」と思われがちですが、実際の製造現場では以下のような多くの課題に悩まされています。
目詰まりがよく起きる
固形分濃度が高いスラリーや微細粒子を含むスラリーでは、フィルターの目詰まりが頻繁に発生するという声を多く聞きます。一度目詰まりが起こってしまうと固液分離の精度が大幅に落ちてしまうため、目詰まりのたびにラインを停止して洗浄・交換が必要となり、生産効率の低下や予期しないダウンタイムを招いてしまいます。
フィルター寿命が短くコストがかさむ
使用環境に合わないフィルター素材を選んでしまうと、劣化や破損が早まり交換頻度が上がります。この頻度が上がると、交換作業にかかる人的コストや部品などのコストも上がってしまいます。フィルターの性能1つで、短期的に見ると小さなコストでも長期的に見ればより大きなコストを発生してしまうのです。
製品の品質が低下してしまう
フィルターの目開きがスラリーの粒子径に対して適切でない場合、捕捉すべき微細粒子が液体側に流出してしまいます。これは製品の純度が低下したり、その影響で品質が低い製品を発生してしまったりすることにつながってしまいます。最悪の場合はリコールや顧客クレームに発展するリスクもあるでしょう。
耐久性がそもそも低い
化学素材の製造工程では、強酸・強アルカリ・有機溶剤・高温流体を扱うケースは珍しくありません。樹脂系や不織布系のフィルターではこうした極限の環境下で膨潤・溶解・変形を起こすことがあり、うまくろ過分離できないことがあります。それだけでなく耐久性が低いとフィルターの素材が脱落してしまい、異物混入につながり、上記のような製品品質の低下にやはり影響を及ぼす恐れがあります。
このようにろ過分離ではさまざまな課題があるため、それらを解決できるような高性能なフィルターが必要です。しかしフィルターはろ材によって大きく性能が異なるため、改めてここで理解しておきましょう。
フィルターの耐久性については「【比較】 耐久性の高いフィルターはどれ?企業の競争力を高める高耐久性フィルターを紹介」をご覧ください。
フィルターの素材・構造による性能の違い
固液分離の精度・耐久性・コストは、フィルターの素材と構造によって大きく異なります。不織布・セラミック・金属焼結など各タイプにはそれぞれ得意・不得意があり、スラリーの特性や使用環境に応じた選定が求められます。
| 耐食性 | 耐熱性 | 耐圧性 | |||
| 酸 | アルカリ | 有機溶剤 | |||
| 不織布 | × | △ | 〇 | △ | × |
| ポリエチレン・ ポリエステル | 〇 | 〇 | △ | × | × |
| 金属(単層) | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 積層焼結金網(複数層) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
参考:ユーザーのためのフィルターガイドブック-金属フィルター・スクリーン等編-|日本液体清澄化技術工業会
不織布
不織布やフィルタークロスは導入コストが低く、使い捨て運用ができる手軽さがメリットです。しかし繰り返し使用や高温・強薬液環境には弱く、洗浄再生性も限られます。また目開きの均一性に課題があるため、高精度な分離が求められる用途や、長期的なランニングコスト削減を目指す場面には不向きな場合があります。
ポリエチレン・ポリエステル
ポリエチレン・ポリエステルを用いたフィルターはその多孔性により耐薬品には優れていますが、熱や衝撃には弱いため耐熱性・強度という観点では課題があります。
金属(単層)
主にステンレス製の単層金属フィルターは、強度・耐食性・耐熱性のバランスが良く、多孔質構造による高い分離精度を持ちます。洗浄による再生も可能で、長寿命が期待できます。ただし単層のため細孔径の均一性はやや劣る場合があり、スラリー中の微細粒子をムラなく捕捉する精密ろ過用途では、開口径の均一性がより高い積層構造のフィルターが有利になることがあります。
積層焼結金網(複数層)
ニチダイフィルタの独自技術により実現した、複数層の金網を積層して焼結した構造を持つフィルターです。複数層の金属メッシュの組み合わせにより、均一で高精度なろ過分離を行えます。ろ過精度が高いボンメッシュは25~250μmの粒度でろ過ができます。また、ステンレス製の金網を独自の拡散接合技術で一体構造化しているため複数層強度・耐久性・耐薬品性にも優れています。

ほかにも金属のため繰り返し洗浄による再生使用が可能で、ほかのろ材よりも圧倒的に長寿命です。そして形状・サイズのカスタマイズ自由度が高い点も、高評価の理由の一つになります。
上記のようにフィルターの素材はいくつかありますが、中でもおすすめなのが高耐久性や高精度なろ過を実現できるニチダイフィルタの積層焼結金網フィルターです。
ろ過分離ならニチダイフィルタの積層焼結金網フィルターがおすすめ
スラリーの固液分離に用いられるろ過分離・遠心分離の工程では、ニチダイフィルタの加圧ろ過機(フィルタドライヤー)および遠心分離機が多くの現場で採用されています。これらの装置には積層焼結金網フィルターを使用しており、固液分離を高い精度で実現しています。
この積層焼結金網フィルターはステンレス316製を採用しており、過酷な使用条件にも対応できる以下の特長を備えています。
加圧・逆圧に強い高い耐圧性
ろ過工程では加圧による固液分離だけでなく、目詰まり解消のための逆圧洗浄も頻繁に行われます。積層焼結構造により一体化されたフィルターは、正逆双方の圧力に対して安定した性能を発揮し、変形・破損のリスクを大幅に低減します。
高温から低温まで対応する幅広い温度耐性
化学品や医薬品のスラリー処理では、高温・冷却どちらも行う場合があります。従来のフィルターであれば耐えられない環境でも、積層焼結金網フィルターならではの耐熱・耐冷性能により、温度変化の激しい環境下でも安定したろ過精度を維持します。
洗浄して繰り返し使用できる再利用性
前述したように不織布などの使い捨てろ材と異なり、焼結金網フィルターは洗浄・再生して繰り返し使用することが可能です。長期にわたるランニングコストの削減はもちろん、廃棄物の削減による環境負荷の低減にも貢献します。
スラリーの固液分離において、精度・耐久性・コストパフォーマンスすべてを高いレベルで求めるのであれば、ニチダイフィルタの積層焼結金網フィルターがおすすめです。装置への組み込みから形状・サイズのカスタマイズまで、ぜひお気軽にご相談ください。
スラリーの固液分離には高性能フィルターが欠かせない
スラリーの固液分離は、製造現場における品質・収率・コストを左右する重要な工程です。ろ過分離・遠心分離・沈降分離のなかでも、幅広いスラリー特性に対応できるろ過分離は多くの現場で採用されています。なかでも積層焼結金網フィルターは、高精度・高耐久・再生可能の三拍子が揃った選択肢として、多くのお客様に選ばれ続けています。
ニチダイフィルタは積層焼結金網フィルターの生産能力で世界一を誇るメーカーとして、50年以上の実績と技術力でお客様のあらゆるニーズにお応えしています。設計から製造、アフターサービスまでの一気通貫体制により、現場の課題に的確にお応えします。なにかお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。


