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焼結とは-原理から焼結金属・金属金網の拡散接合技術まで徹底解説

2026/08/10

  • 技術の紹介
監修 ニチダイフィルタ株式会社 技術部

焼結とは、金属やセラミックスなどの粉末、あるいは金網といった素材を、融点よりも低い温度で加熱し、素材を溶かすことなく固体のまま結合・一体化させる加工技術のことです。

「焼結」と検索すると、多くの解説では金属粉末やセラミックス粉末を型に入れて加圧成形し、高温で焼き固める「粉末冶金」のイメージで説明されることが多いですが、焼結の対象は粉末だけにとどまらず、金属の「金網」を何層にも重ね合わせて焼結し、一体構造の多孔質部材をつくる技術も含まれ、フィルターや整流部材、多孔質金属といった分野で重要な役割を担っています。

本記事では、焼結という言葉の基本的な意味と原理を整理したうえで、金属粉末の焼結との違いを踏まえながら、金属金網を焼結する技術――拡散接合――の仕組みを中心に解説します。フィルター用途における焼結金網の優位性や、実際に採用されている産業分野についても具体的に紹介します。

焼結の基本原理:なぜ「融点以下」で素材が結合するのか

焼結という加工が特殊なのは、素材を溶かす「鋳造」や、溶接のように部分的に溶融させて接合する手法とは異なり、固体の状態を保ったまま素材同士を結合させる点にあります。

一般的な焼結のプロセスは、次のような流れで進みます。

  1. 粉末や金網など、結合させたい素材を目的の形状に配置・積層します
  2. 真空雰囲気や不活性ガス雰囲気の炉内で、素材の融点に近い温度域まで加熱します
  3. 素材同士が接触している界面(接点)で、原子が移動する「拡散」という物理現象が起こります
  4. 接点をまたぐ形で結晶が再形成され、素材同士が冶金的に一体化します

この「素材を溶かさずに、原子拡散によって接点を一体化させる」という原理こそが焼結の本質であり、広い意味では「拡散接合」と呼ばれる技術の一種として位置づけられます。粉末を焼結する場合も、金網を焼結する場合も、この基本原理自体は共通しています。

焼結工程の品質を左右する管理パラメータとしては、主に以下の4つが挙げられます。

焼結工程の品質を左右する管理パラメータ

  • 加熱温度:融点に近づけるほど原子拡散は進みやすくなりますが、温度が高すぎると素材の形状が崩れるリスクがあります
  • 保持時間:接点における結晶の再形成には一定の時間を要するため、短すぎると接合が不十分になります
  • 雰囲気:真空や不活性ガスといった雰囲気で処理することで、酸化や不純物の混入を防ぎ、清浄な接合面が得られます
  • 加圧:素材同士を適切な圧力で密着させることで接点間の距離を縮め、原子拡散を促進します。圧力が不足すると接合不良の原因になります

これらのパラメータをどのように制御するかによって、できあがる焼結体の強度やろ過性能、寸法精度が大きく変わってきます。単に「融点以下で加熱すれば焼結できる」というものではなく、素材の組み合わせや目的の性能に応じた温度・時間・雰囲気の設計こそが、焼結技術における各社のノウハウが表れる部分だといえます。

焼結技術の2つの潮流:「金属粉末の焼結」と「金属金網の焼結」

焼結という技術は、素材の形態によって大きく2つの系統に分けて理解すると整理しやすくなります。

分類素材の形態代表的な成形方法代表的な製品・用途
粉末系の焼結金属・セラミックスの粉末金型プレス成形+焼結、金属射出成形(MIM)歯車・軸受などの機械部品、電子部品、切削工具
金網系の焼結金属の線材を織った金網複数層の金網を重ねて焼結(積層焼結)焼結金網フィルター、多孔質金属パネル、整流部材

粉末冶金やMIMは自動車部品や精密機械部品の分野で広く知られており、「焼結」というキーワードで検索した際に最も多くヒットするのはこちらの系統です。粉末を金型に充填して圧縮成形し、その形状を保ったまま焼結炉で焼き固めることで、複雑な形状の部品を切削加工なしに量産できる点が粉末系焼結の強みであり、歯車や軸受、含油軸受などに広く使われています。

一方で、フィルターや異物除去、ろ過といった技術課題を抱える食品・医薬品・化学プラントなどの現場においては、金属金網を焼結して一体構造化する技術の理解が欠かせません。粉末系の焼結体は基本的に緻密な形状部品として使われるのに対し、金網系の焼結体はもともと網目という「孔」を持つ素材を活かし、ろ過や整流といった多孔質特性が求められる用途に用いられる点が大きな違いです。次章以降では、この金網系の焼結技術――拡散接合による積層焼結――にフォーカスして解説していきます。

拡散接合の仕組み:金属金網が一体構造になるメカニズム

金属金網を焼結する技術は、拡散接合と呼ばれるプロセスによって実現されます。具体的な仕組みは次のとおりです。

まず、目的の網目の粗さや織り方が異なる複数枚のステンレス金網を、用途に応じた組み合わせで重ね合わせます。次に、これを真空雰囲気の炉内に置き、ステンレス素材の融点近くの温度域まで加熱して一定時間保持します。この温度条件下では、金網が接触している接点部分で原子が動きやすくなる「拡散現象」が発生します。積層された金網の結晶が接点をまたぐような形で再形成されることで、金網同士が冶金的に結合し、ひとつの一体構造として仕上がります

拡散接合前・拡散接合技術(真空状態での加圧・加熱)・拡散接合後の3ステップで、金属金網が一体構造になる流れを示したイラスト
拡散接合前・拡散接合技術(真空状態での加圧・加熱)・拡散接合後の3ステップで、金属金網が一体構造になる流れを示したイメージ

この工程で押さえておきたいポイントは以下の3点です。

  • 溶接やろう付けとは異なり、追加の溶加材(溶接棒やろう材)を使わずに一体化できること
  • 加熱・保持する温度と時間を精密に制御することで、金網の網目形状や強度をコントロールできること
  • 真空雰囲気で処理するため、酸化や不純物の混入が起こりにくく、清浄な接合面が得られること

金網同士が単に重なっているだけの状態と、拡散接合によって一体構造化された状態とでは、機械的強度・耐圧性・耐久性に大きな差が生まれます。ろ過という用途において「金網が一体構造であること」自体が、後述するろ過性能の均一性や耐久性に直結する重要な要素となります。

焼結金網とは何か:フィルターに応用される理由

複数枚の金属金網を焼結によって積層一体化すると、それぞれの層の網目が互いに交錯した状態になります。粗い網目の金網と密な網目の金網を組み合わせたり、金網とパンチングメタル、金網と金属粉末、金網と金属繊維(メタルファイバー)といった異なる素材を組み合わせたりすることで、単一の金網だけでは実現できない微細で均一なろ過構造をつくり出せます

この「焼結金網」がフィルター用途で評価される理由は、主に次のような特性にあります。

特性内容
ろ過精度網目の交点が焼結されることにより、ろ過精度が安定する
機械的強度金網同士が冶金的に結合しているため、高い強度・耐圧性を持つ
耐食性・耐熱性・耐寒性ステンレスをはじめとした金属素材に近い特性を維持できる
加工性微細な金網が一体化することで加工がしやすくなる

こうした特性から、焼結金網は単なるろ過フィルターとしてだけでなく、整流、粉体輸送、散気、乾燥冷却、浸透、抵抗体といった機能が求められる幅広い産業分野でも活用されています。焼結金網フィルターの構造や種類についてより詳しく知りたい方は、「焼結フィルターとは」の記事も参考にしてください。

焼結金網の組み合わせパターン例

焼結金網フィルターの性能は、どの素材をどう組み合わせて焼結するかによって細かくチューニングできます。代表的な組み合わせパターンには、以下のようなものがあります(組み合わせはあくまで一例であり、実際の設計は用途に応じたオーダーメイドで検討されます)。

メッシュ(粗)+メッシュ(密)の組み合わせパターン

メッシュ(粗)+メッシュ(密)

粗い層で強度を保ちながら、密な層でろ過精度を高める

メッシュ+パンチングメタルの組み合わせパターン

メッシュ+パンチングメタル

パンチングメタルで補強し、耐圧強度を高める

メッシュ+ステンレス板の組み合わせパターン

メッシュ+ステンレス板

板材による支持で、形状安定性を高める

メッシュ+粉末の組み合わせパターン

メッシュ+粉末

粉末層によって、より微細な孔径を形成する

メッシュ+エッチングプレートの組み合わせパターン

メッシュ+エッチングプレート

エッチング加工による精密な孔パターンを組み合わせる

メッシュ+ファイバーの組み合わせパターン

メッシュ+ファイバー

表面ろ過に加え内部ろ過構造を持たせ、異物捕集効果を高める

エッチング(粗)+エッチング(密)の組み合わせパターン

エッチング(粗)+エッチング(密)

粗密の異なるエッチング層で精密な孔構造をつくる

エッチング+パンチングの組み合わせパターン

エッチング+パンチング

パンチング層で補強しながら精密ろ過層を組み合わせる

どの組み合わせが最適かは、ろ過対象となる流体の性質(液体かガスか、粘度、温度、腐食性など)や、求められるろ過精度・強度・洗浄頻度によって変わります。

また、金属製の焼結金網フィルターは樹脂製フィルターと異なり、洗浄して繰り返し使用できる点も現場から評価されているポイントです。目詰まりしたフィルターを都度廃棄・交換するのではなく、超音波洗浄や逆洗といった方法で異物を除去し再生することで、ランニングコストの低減にもつながります。

焼結技術が活用される代表的な産業分野

金属金網を焼結した多孔質部材・フィルターは、ろ過精度と耐久性の両立が求められる幅広い産業分野で採用されています。

業界主な用途例
食品・飲料液体ろ過、充填ノズル、食品用ストレーナー
医薬品・化粧品原薬製造時のろ過・乾燥板、化粧品製造ラインのストレーナー
石油化学ガスろ過、ポリマーろ過
半導体薬液ろ過
水素エネルギー水素ステーション向けフィルター
航空宇宙ロケット燃料系フィルター、流量制御電磁弁用フィルター

このように焼結技術は、目に見えない部品でありながら、製造現場の品質やプラントの安定稼働を根底で支える技術です。特に食品・医薬品分野では異物混入対策として、半導体・化学プラントでは薬液やガスの高精度なろ過として、それぞれの現場が抱える技術課題に直結する形で採用が進んでいます。

焼結金網フィルターの信頼性を示す一例として、国産のH-IIAロケットやH3ロケットの燃料系フィルターに、金属金網を焼結した積層焼結フィルターが採用されている実績があります。真空・低温・高圧といった極限環境下で確実に機能することが求められる用途で使われている点は、焼結金網の耐久性・信頼性を裏付けるものだといえます。近年ではこうした宇宙関連用途に加え、船舶用の大型海水ストレーナーや燃料電池車向けフィルターなど、新たな用途への展開も進んでいます。

焼結とフィルターの関係:「焼結フィルター」との違い

ここまで解説してきた「焼結」は、素材同士を融点以下の温度で一体化させる加工技術・製法そのものを指す言葉です。一方で「焼結フィルター」は、その焼結という製法を用いてつくられた製品カテゴリを指します。つまり、焼結はプロセス(つくり方)、焼結フィルターはプロダクト(できあがったもの)という関係にあります。

金属金網を焼結してつくられたフィルターは、単層の金網や織布フィルターと比較して、ろ過精度・強度・耐久性のバランスに優れる点が特長です。焼結フィルターの構造や種類、金属粉末の焼結との違いをさらに詳しく知りたい場合は「焼結フィルターとは」の記事を、実際にフィルターを選定する際の比較ポイントを知りたい場合は「焼結フィルターの選び方」の記事をあわせて参照してください。

焼結に関するよくある質問(FAQ)

Q. 焼結と鋳造・鍛造はどう違いますか?

A. 鋳造は素材を溶融させて型に流し込み、冷やし固める加工方法です。鍛造は素材に力を加えて塑性変形させる加工方法です。これに対し焼結は、素材を溶かさず、融点以下の温度で原子拡散を利用して固体のまま結合させる点が根本的に異なります

Q. 焼結と溶接はどう違いますか?

A. 溶接は接合部を局所的に溶融させ、多くの場合溶加材を加えて接合します。焼結(拡散接合)は素材を溶融させず、溶加材も使わずに、接点における原子拡散だけで一体化させる点が異なります。

Q. 金属金網の焼結にはどのような金属が使われますか?

A. 標準的にはステンレス(SUS316Lなど)が多く用いられます。用途によってはインコネルやハステロイといった耐熱・耐食性に優れた特殊材質が使われるケースもあり、実際にどの材質が適用可能かはメーカーへの確認が推奨されます。

Q. 焼結金網フィルターはなぜ耐久性が高いのですか?

A. 金網同士が拡散接合によって冶金的に結合しているため、単に重ねただけの状態や接着剤で固定した状態と比べて、機械的強度・耐圧性・耐熱耐寒性が高く、長期使用時の網目の型崩れや脱落が起こりにくいためです。

Q. 焼結金網は何層くらい重ねて使われるのですか?

A. 求めるろ過精度や強度によって層数は異なり、粗い網目と密な網目を組み合わせた数層構成から、補強材を含めた5層前後の構成まで、用途に応じて設計されます。層数や組み合わせパターンが多いほど、ろ過精度・機械的強度・洗浄性のバランスを細かく調整できます。

Q. 焼結フィルターを選定する際に注意すべき点はありますか?

A. 求めるろ過精度、流体の温度・圧力条件、使用環境(腐食性の有無など)、洗浄性の要否によって最適な金網の組み合わせ・素材が異なります。具体的な選定ポイントについては「焼結フィルターの選び方」の記事で詳しく解説しています。


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ニチダイフィルタの
積層焼結金網フィルター

石油化学・医薬品・食品・航空宇宙まで、幅広い産業で選ばれる理想的なろ過構造。

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まとめ

焼結とは、金属やセラミックスの粉末、あるいは金属金網といった素材を、融点以下の温度で固体のまま結合・一体化させる加工技術です。一般に知られる粉末冶金による焼結だけでなく、金属金網を拡散接合によって積層一体化する焼結技術は、食品・医薬品・石油化学・半導体・水素エネルギー・航空宇宙といった幅広い産業のろ過・多孔質部材のニーズを支えています。

焼結という言葉だけを見ると素材加工の一分野に過ぎないように思えますが、実際にはその精度と信頼性が、食品・医薬品の品質保証や、プラント・航空宇宙分野の安全稼働を陰で支えています。「焼結とは何か」を正しく理解することは、フィルターや多孔質部材の選定において、カタログスペックの数字だけでは見えない性能差を見極める第一歩にもなります。

焼結金網フィルターの構造や、実際の選定方法についてさらに詳しく知りたい方、あるいは自社の異物混入・ろ過に関する技術課題について相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。

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