
「焼結フィルターの種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」「メーカーによって対応範囲が違うと言われたが、比較の仕方がわからない」——製造現場では、こうした声を多くいただきます。焼結フィルターは、ろ材の種類・織り方・材質の組み合わせによって、ろ過精度・機械的強度・耐食性・洗浄性が大きく変わるため、用途に合った選定ができるかどうかが導入効果を左右します。本記事では、選定の基本となる3つの軸から、メーカー選びで確認すべき5つのポイントまでをわかりやすく解説します。
焼結フィルターの選定で失敗しやすい理由
焼結フィルターは「同じように見えて性能が大きく異なる」製品です。選定を誤った場合、次のような問題が起こりやすくなります。
- ろ過精度が不足し、異物混入や不具合が再発する
- 圧力損失が想定より大きく、流量・生産性に影響が出る
- 使用環境(高温・高圧・腐食性流体)に材質が適合せず、早期に劣化する
- 洗浄・再生に対応していない仕様のため、都度交換コストがかかる
こうした問題の多くは、発注前に「3つの軸」を整理し、用途に応じた仕様を明確にすることで回避できます。焼結フィルターそのものの基礎知識は「焼結フィルターとは?仕組みやメリット、用途・特徴を徹底解説!」で解説していますので、あわせてご覧ください。
選定の前に確認したい3つの軸
焼結フィルターの仕様は、「ろ材の種類」「構造(織り方)」「材質」という3つの軸の組み合わせで決まります。まずはこの3軸を押さえておくと、メーカーとの打ち合わせがスムーズになります。
軸1:ろ材の種類で選ぶ
ろ材の種類が異なると、得意とする形状・流量・設置スペースの制約が変わります。
- 金網:最も一般的で性能の高いろ材。織り方によりさらに細分化される
- 金属粉末:複雑な三次元形状や、フラット・溝形状・凸形状を一体成形しやすい
- パンチングプレート:鋼板に多数の穴を機械加工したろ材
- ノッチワイヤー/ウェッジワイヤースクリーン:スリット状の隙間でろ過するろ材
- 金属繊維(メタルファイバー):繊維同士が絡み合い、大きなろ過面積を確保しやすい
設置スペースが限られる場合は粉末タイプ、高流量が必要な場合は繊維タイプ、汎用性と強度のバランスを求める場合は金網タイプ、といった形で用途に応じた第一の絞り込みができます。
軸2:構造(織り方)で選ぶ
金網タイプの場合、織り方によってろ過精度・強度が変わります。
| 織り方 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 平織 | 最も基本的な織り方 | 汎用用途 |
| 綾織 | 平織より高いろ過精度 | やや高精度が必要な用途 |
| 平畳織 | 横線が交互に重なる構造 | 強度重視の用途 |
| 綾畳織 | 綾織と平畳織を組み合わせ、最も高いろ過精度 | 高精度・高強度が同時に必要な用途 |
さらにニチダイフィルタ独自の積層焼結金網フィルターは、複数の金網を拡散接合により一体化させることで、単層の織り方では実現できない精度と強度を両立させています。各層の金網によって網目が互いに交錯するため、ろ孔の形状が微細で均一な、理想的なろ過構造を形成する点が特徴です。
軸3:材質で選ぶ
材質は、使用環境(温度・圧力・腐食性)との適合性を左右する最も重要な軸のひとつです。
| 材質 | 種類 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| オーステナイト系ステンレス | SUS316、316Lなど | 汎用性が高い | 一般的な液体・ガスろ過 |
| フェライト系ステンレス | SUS430 | 安価、磁性あり | コスト重視の用途 |
| ニッケル合金(インコネル) | インコネル | 耐食性が高い、耐酸化性、高温強度 | 化学プラント等の腐食環境 |
| ニッケル合金(モネル) | モネル | 耐食性が高い、フッ素ガスに使用 | フッ素ガスを扱う工程 |
| 耐食・耐熱合金 | ハステロイ | 耐食性が高い | 強酸・高腐食環境 |
| チタン合金 | チタン、チタン合金 | 耐食性が高い、軽量 | 医薬品・軽量化が必要な用途 |
当社ではステンレス・ハステロイ・インコネルに実績があります。材質選定に迷う場合は、扱う流体の性状(温度・圧力・腐食性)を伝えていただければ、適した材質をご提案できます。
焼結フィルターならではのメリットとおさらい
3つの軸を組み合わせる前に、焼結フィルターが他のろ過方式と比べてどのような強みを持つのかを整理しておきます。
- 高いろ過精度と機械的強度を両立しやすい:複数の層を拡散接合により一体化するため、単層構造では両立が難しい「精度」と「強度」を同時に確保できます
- 高温・高圧環境への耐性:金属素材のため、樹脂系フィルターでは対応が難しい高温流体や高圧条件でも安定した性能を発揮します
- 洗浄による繰り返し使用が可能:目詰まりした場合も洗浄・再生により性能を回復できるため、使い捨てのカートリッジ式フィルターと比べてランニングコストを抑えやすい構造です
- 一品一様のカスタマイズがしやすい:形状・材質・ろ過精度を個別に組み合わせられるため、標準品では対応しにくい特殊用途にも柔軟に対応できます
用途別の選定ポイント
用途によって「何を優先すべきか」が変わるため、種類・構造・材質の3軸をどう組み合わせるかは用途ごとに検討が必要です。
| 用途 | 選定時に確認したいポイント |
|---|---|
| 液体・ガスのろ過 | 除去したい異物のサイズ(ろ過精度)、流量、圧力損失の許容範囲。異物のサイズが小さくなるほど高精度な織り方・材質の組み合わせが必要になり、同時に圧力損失も大きくなりやすいため、流量とのバランス確認が欠かせません。 |
| 発泡(バブリング) | 気孔の均一性による整流効果、気体分散のムラの許容範囲。気孔径のばらつきが分散ムラに直結するため、安定した気泡径を求める場合は精度の高い織り方(綾織・綾畳織)を検討する価値があります。 |
| 粉体処理(給気・脱気) | 粉体の粒度、凝集性、処理速度。粒度や凝集性によって目詰まりのしやすさが変わるため、処理速度を優先するか目詰まりへの耐性を優先するかで、ろ材の種類の選び方が変わります。 |
| 防護 | 想定される衝撃・粉塵・ガスの種類と強度要件。使用環境の条件を可能な限り具体的に伝えることが、適切な仕様提案につながります。 |
| サニタリー用途(食品・医薬品) | CIP対応可否、洗浄性、業界規格(食品衛生法・GMP等)への適合。洗浄性とCIP(定置洗浄)対応の可否が選定の分岐点になりやすい領域です。 |
たとえば食品・医薬品分野では、洗浄性とCIP対応の可否が選定の分岐点になりやすく、化学プラントや半導体分野では、腐食性流体や薬液への耐性が優先されるケースが多くなります。用途によって優先すべき性能(精度/強度/洗浄性/耐食性)の重み付けが変わるため、複数の候補仕様を比較しながら絞り込むことをおすすめします。
焼結フィルターのメーカーを選ぶときのチェックポイント
同じ「焼結フィルター」でも、メーカーによって対応できる仕様・サービス範囲は異なります。選定時には以下の5点を確認することをおすすめします。
1. 設計から製造まで一貫対応できるか
仕様検討の相談段階から、設計・試作・量産までを社内で一貫対応できるメーカーであれば、仕様変更や特殊要求にも柔軟に対応しやすくなります。
2. カスタマイズ対応力
標準品だけでなく、形状・材質・ろ過精度を個別にカスタマイズできるか。一品一様の要望に応えられる体制があるかは、特殊用途では重要な判断材料です。
3. 洗浄・再生サービスの有無
焼結フィルターの強みである「洗浄による再利用」を活かせるかどうかは、メーカーが洗浄サービスを提供しているかに左右されます。当社ではフィルター洗浄サービスを提供しており、性能を回復させたうえで再度ご使用いただけます。
4. 生産体制・供給力
量産対応が可能な生産設備を持っているかは、安定調達の観点で確認しておきたいポイントです。当社は2007年にタイに生産拠点を設立し、日本・タイ双方で大型の真空炉を稼働させることで、積層焼結金網フィルターの生産において世界トップレベルの供給力を実現しています。
5. 業界実績
食品・医薬品・化学プラント・半導体・航空宇宙など、自社の業界に近い実績があるかどうかも、仕様検討をスムーズに進めるうえで参考になります。当社は50年以上にわたり拡散接合(焼結)技術によるステンレス加工に取り組んでおり、国産ロケットの燃料系フィルターへの採用実績をはじめ、石油化学・原子力・航空宇宙など幅広い業界での採用実績があります。
選定でよくある質問
Q. 仕様が固まっていない段階でも相談できますか?
A. 可能です。扱う流体の性状や現在の課題(交換頻度が高い、異物混入が多いなど)を伝えていただければ、そこから仕様を一緒に絞り込んでいけます。
Q. 標準品とカスタマイズ品はどちらを選ぶべきですか?
A. 一般的な液体・ガスろ過であれば標準品で対応できるケースが多くあります。特殊な形状・接続方式・極端な使用環境が伴う場合は、カスタマイズ品のご相談をおすすめします。
Q. 複数メーカーを比較する際、どこを見ればよいですか?
A. 「対応できる材質・形状の幅」「洗浄・再生サービスの有無」「量産時の供給安定性」「業界実績」の4点を軸に比較すると、仕様面・運用面の両方から判断しやすくなります。
Q. 焼結フィルターとメッシュフィルター(一般的な金網フィルター)は何が違いますか?
A.一般的な金網フィルターが単層の織り金網であるのに対し、 焼結フィルターは複数の金網や粉末を高温で拡散接合し一体構造化したものです。層間剥離が起きにくく、高圧・高流量下でも安定した性能を維持しやすい点が特徴です。
Q. サンプルでの評価は可能ですか?
A. 用途や条件によりご相談に応じています。まずは扱う流体や環境条件、現在お使いのフィルターの課題をお聞かせください。
焼結フィルターの選定は3つの軸とメーカー実績で決まる
焼結フィルターの選定は、「ろ材の種類」「構造(織り方)」「材質」という3つの軸を用途に合わせて組み合わせることが基本です。加えて、メーカー選びでは設計から製造・洗浄までの一貫対応力や生産体制、業界実績も重要な判断材料になります。
ニチダイフィルタは、積層焼結金網フィルターの設計・製造・洗浄までを一貫して自社内で行い、日本・タイの生産拠点により世界トップレベルの生産能力を有しています。仕様が固まっていない段階からのご相談も歓迎しておりますので、装置への組み込みから形状・サイズのカスタマイズまで、ぜひお気軽にご相談ください。
用途・条件に応じたフィルター設計について、ご質問やご相談がございましたらお気軽に お問い合わせください。

